「暮らすように旅しよう」。
いいキャッチコピーですよね?
僕がこのコピーを好きなのは、Airbnbがこの言葉を実現しているからです。
今、Airbnbは世界中でいろんな家に宿泊することができます。
本書は、Airbnbをここまで大きくしてきた軌跡が書かれた一冊です。
本記事の内容
② アンチ金太郎あめ
③ すべての進歩のカギは、「理性のない人」
絶対的ユーザー主義・絶対的行動主義
「絶対的ユーザー主義」、そして「絶対的実行主義」。
本書を読み終わったときに、Airbnbが成功している要因はその二つではないか、と感じました。
一つ一つ紹介します。
絶対的ユーザー主義
「絶対的ユーザー主義」は、Yコンビネーター(起業家支援サービスと起業家学校が一つになった場所起業家支援サービスと起業家学校が一つになった場所)に創業者が所属していた際に培われたものです。
Yコンビネーターにおける創業者3人の恩師はグアムという人物です。
既にブライアン・チェスキーをはじめとした3人はAirbnbを始めていましたが、当時のユーザーは100人ほどで、ユーザーの多くは3人が住んでいるマウンテンビューから離れたニューヨークにいました。
その事実を知ったグアムは、3人にこう告げます。
「こんなところでなにぐずぐずしてるんだ?」
「ニューヨークに行け!ユーザーのところに。」
グアムは創業者3人に対して、「なんとなく好きになってくれている100万人」ではなく「熱烈に愛してくれている100人のファン」をよく知りその対話からサービスをつくっていけと伝えたのです。
そこで、実際に3人は現地に足を運び、「宿泊料の決め方がわからない」「いい写真が取れない」というオーナーの不満を知り、すぐにサービスに反映しました。
さらに、ビジネスが大きくなった後も、ユーザーを中心に新しい発想をしています。
例えば3人は、Airbnbのユーザー体験を絵コンテにして、Airbnbとユーザーのつながりを見直しています。
具体的には、ユーザーがサイトにアクセスしてから、旅行をして家に帰るまでにゲストとホストに何が起きるかを絵にしたのです。いわゆるカスタマージャーニーですね。
カスタマージャーニー作成の結果、彼らは気づきました。
「ユーザーの旅行シーンにAirbnbの登場する場面がとても少ない」と。
当時Airbnbは宿泊予約の場面にしか登場していませんでした。「旅行のすべてを手に入れる」というビジョンを掲げる彼らからしたら不十分だったのです。
その発見から生まれたのが、ゲストの好みに合わせた珍しい現地体験を販売する「マジックボタン」です。こちらは、現在のAirbnbをただの宿泊業者ではない位置づけにしている重要なパーツです。
絶対的実行主義
「絶対的実行主義」はAirbnbの根幹といっても過言ではないでしょう。
Yコンビネーターのスタッフは以下のようにのべています。
「起業したいっていう人は多いけど、実際にやる人はそれほど多くない。彼らはやったんだ。そしてわからないことがあれば、進んでそれを探り、自分のものにした。ぐずぐずと頭の中で想像をこねくりまわしてばかりじゃなかった。ローンチしたんだ。」
アンチ金太郎あめ
Airbnbの特徴を表す言葉の二つ目は、「アンチ金太郎あめ」です。
本書には「Airbnbの在庫には、世界中の住宅市場の多様性がそのまま反映されている」と書かれています。
これは、これまで画一的なクオリティーを保つことに注力してきた高級ホテルとは明らかに一線を画します。
創業メンバーは事業を進めていくうちに、「没個性的な旅行からの脱却」というコンセプトを発見していたのです。
例えば、「エジプトのカイロで目覚めたら、カイロにいる実感がほしい。アメリカの田舎と同じ部屋で目覚めたくないからね。」と創業メンバーは述べています。
多くの旅行者、特段ミレニアム世代は旅行体験に「不完全な本物らしさ」を求めているので、まさにそのインサイトをついたケースだなと思います。
Airbnbは「没個性的な旅行からの脱却装置」になったのです。
泊まる部屋自体も独特ですが、ホテルや観光地以外の普通の環境客が見ることのできない路地裏や町はずれに泊まれるのはAirbnbならではです。
その体験が「暮らすように旅しよう」というキャッチコピーにも表れています。観光客としてではなく、そこに暮らす人のようにその場所を体験できる、ということなのでしょう。まさに没個性的な旅行からの脱却です。
またAirbnbは、「世界中を居場所にする」という言葉も使っています。
Airbnbは旅行よりもはるかに大きな何かを目指しているのです。
それは、コミュニティーと人間関係を象徴する存在であり、さらにその目的は、テクノロジーを使って人々を一つにすることだ、と述べられています。
人々が求めているのは、Airbnbのように、普通の人なら入れないような場所に足を踏み入れ、観光客が普段泊まれないような地域や家に泊まり、誰かの部屋で腰を降ろし、ホストとあってもあわなくても、その人と同じ体験をするという、「場所ではなく体験のシェア」を提供するサービスではないでしょうか?
実際、2016年の全国市長会議でルヘインは以下のように述べています。
「結局、エアビーアンドビーこれほど成功しているのは、アルゴリズムに少々魔法の粉を振りかけたからじゃない。人と人が触れ合って、人生を変える経験をさせてくれるプラットフォームを作ったからだ。」
創業者チェスキーお気に入りの言葉があります。
「理性的な人は自分を環境に合わせる。理性のない人は環境を自分に合わせる。それゆえ、すべての進歩は理性のない人にかかっている。」
Airbnbの規模で語ってしまうと大きな話で実感がわかないかもしれません。
しかし、例えば普段の仕事で、言われた通りにやる社員しかいない会社にイノベーションは起こらないでしょう。
「自分はこう思う、こうしたい」という自分なりの見立てを見つけて厚かましく発信し、仲間を見つけて実現し続けていく、こういったことであれば、多少は理性にあらがっているといえるのではないでしょうか?
まとめ
「暮らすように旅しよう」、この新しいが心地よいコンセプトに代表されるAirbnbは、今後どのような発展をしていくのでしょうか?
個人的には、MaaSの時流に乗って自動車メーカーやモビリティーサービスの企業と組んだら面白いな、と思っています。
例えばトヨタと組んで、「旅行先での家」にたどり着くまでのにベストなクルマを選んでくれるサービスとパッケージで売る、さらに移動中は、Airbnbに蓄積している登録データで、自分だけのプレイリストが流れる、自分が好きな景色が見えるルートを推奨してくれる、そんなコレボレーションが実現したら面白そうです。
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