【2023年版】子供の将来を左右する「非認知能力」は”生きる力”の総称

非認知能力

最近よく「非認知能力」って言葉を聞くけどどういう意味なんだろう?子供の将来にとって重要みたいだけど。。。

本記事ではこのような疑問を持つ方に向けて、「非認知能力」について図解を含めて分かりやすく説明します。

僕自身、非認知能力を育てる教育サービスの開発をしたり、教育関係の本当論文を合わせて100冊(本)程度読んでいます。

 

本記事の結論

先に本記事の結論を簡単に記載します。
気になる項目がある方はその項目まで飛ばしてみてください。

1,非認知能力は、数値化が難しいが(子どもの)人生を豊かにするために必要な能力群
2,非認知能力は、「ペリー就学前プログラム」により注目を集めた
3,自己効力感、継続する力(GRIT)、内発的動機付けなどが非認知能力に該当する

では、詳しく内容を見ていきましょう。

 

非認知能力は、生きる力の”総称”

非認知能力は以下の条件を満たす能力を指します。

  • 「認知能力」ではない能力
  • 数値化することは難しいが子どもの将来にポジティブな影響を与える能力

まずは非認知能力と対をなす概念である「認知能力」について解説します。

認知能力は、知能検査やテストで測定・数値化できる能力のことです。
例えば、IQや数学のテストの点数、偏差値などが認知能力に該当します。

一方非認知能力は、上記の検定やテストなどで数値化、指標化することが難しい能力群です。
中でも特に子供の一生を豊かにする能力群を非認知能力と定義することが多いです。
*非認知能力は数値化することが”難しい”ですが、決して数値することが”できない”訳ではありません。例えば非認知能力の一つであるGRITは「グリット・スケール」という方法で計測することが可能です。

少しわかりにくいと思うので例を挙げます。
下記の能力などが非認知能力に該当します。
*詳しくは本記事の後半で取り上げます

自己効力感:挑戦する物事に対して「自分ならできる」と思える感覚
継続する力(GRIT):熱意を持ち、一度始めたことを継続してやり遂げる力
内発的動機付け:自分自身の中にある感情をベースにやる気を引き出す力

少し難しい概念だと思うので、ここまでの話を図にまとめておきます。

また、次に紹介する「ペリー就学前プログラム」では、非認知能力が将来の年収や犯罪率などポジティブな影響を与えることが示唆されています。

 

「ペリー就学前プログラム」で非認知能力に注目が集まった

この非認知能力ですが、今教育業界では非常に注目されています。

Google内での検索量推移を見ることができるGoogle Trendを見てみましょう!

「非認知能力」は2014年から徐々に注目を集めていることがわかると思います。


出典)Google Trend

では、なぜ非認知能力が注目されているのでしょうか?

その理由のうち最も大きな要因が「ペリー就学前プログラム」という研究結果が発表されたことです。

ペリー就学前プログラムは、1960年代にアリメカで開始された実験です。

この研究では、アフリカ系米国人の貧困層の子供とその養育者を対象に、教育的な介入を行いその効果を何十年間も追跡調査しています。

「教育的介入」と聞くと難しいと思うかもしれません。
具体例を挙げると、
・平日の午前中毎日子供を幼稚園に通わせて簡単な幼児教育のプログラムを実施する
・週1回親に対して教師などが家庭を訪問して子供の成長・育成について話し合う場を持つ
などのアクションがペリー就学前プロジェクトにおける教育的介入です。

上記の介入を受けた子供の40歳前後の生活・仕事状況がとてもポジティブなものだったのです。

具体的には、ペリー就学前プログラムを受けた子供は、同じくアメリカ系アフリカ人の貧困層と比べると下記のような点において突出していたそうです

・高校卒業率が高い
・収入が高い
・持ち家率が高い
・離婚率が低い
・犯罪率、生活保護受給率が低い

つまりペリー就学前プログラムを受けた人はそうでない子供と比べて経済的に自立していて、健全な生活を送っている人の割合が高かったのです。

そしてこの研究の注目すべき点はもう一つあります。

なんと、年収、犯罪率などの差を生んでいたのがIQに代表される認知能力ではなかったのです。

厳密には、介入を受けた子供は幼稚園に通っている間は、介入を受けていない子供に比べて高いIQを記録していたそうです。

ただしそのIQの差は8歳時点でほとんどなくなってしまいました。

「教育的介入を受けた子供の生活、仕事レベルは介入を受けたかった子供よりも高い」
「その結果は認知能力の向上によってもたらされるものではない」
という2つの発見によって、「IQなどの認知能力以外に子供の将来に影響を与える要因がある」という結論が導き出されたわけです。

そしてその、「認知能力には含まれないが子供の影響にポジティブな影響を与える能力」こそが、「非認知能力」であるとされ注目を集めたのです。

さらに、ノーベル経済学賞を受賞したヘックマンが、アメリカの社会格差を解決するための有望な鍵として、幼児教育における非認知能力に言及したことで注目を集めました。

 

子供の非認知能力を伸ばす3つの方法

最後に、具体的にはどんな能力が非認知能力に該当するのかを見ていきましょう。
細かく見ていくと、下記の表に乗っているものが非認知能力に該当します。

本記事では、上記の表内でも子供の将来にとってポジティブな影響が確認されている3つの能力を詳しく取り上げます。

 

非認知能力に含まれる能力①:自己効力感

自己効力感は、特定の課題に取り組む際に「自分ならそれを達成できる」と信じる力

例えば学校でテストを受ける際、勉強を始める前から「どうせ僕なんて、、」と考えてしまうのは自己効力感が低い子供の典型例です。

反対に、「自分なら絶対に高い点数をとることができる」と考えて前向きに勉強に取り組むのは自己効力感が高い子供の特徴です。

そして自己効力感を伸ばすのは、「褒め方」が非常に重要です。

具体的には、「才能、数字、結果」などだけではなく、「過程、努力、行動」を褒めてあげてください。

基本的に人は褒められたことを再現しようとするので、例えば近所も友達と仲直りできたことではなく、仲直りをするために子供がとった具体的な行動を褒めることが重要です。

自己効力感を高めるには、「結果」ではなく「過程、努力、行動」を褒めよう!

*子どもの自己効力感を高める方法はこちらの記事をご覧ください

 

非認知能力に含まれる能力②:グリット

GRITは、アンジェラ・ダックワースの『GRIT やり抜く力』によって一気に注目を集めた概念です。

GRITは具体的には、「情熱」と「粘り強さ」で構成されています。
一度何かを始めたらそのほかのものに気を取られず、挫折をしても立ち直って挑戦し続ける力を指します。

GRIT やり抜く力』によると、最後までやり遂げる力を伸ばすポイントは大きく2つあります。

一つは、親自身が何かに挑戦して、最後までやり抜く姿を見せることです。

言わずもがな、子供は最も一緒にいる時間が長い親の行動や言動から多くを学びます。

子供に「最後までやりなさい」と言っても、親もしくは教師であるあなた自身が何も挑戦をしていなかったり、例えばパン教室に通って1ヶ月で退会したりすると、子供はグリットが必要ないものだと認識してしまいます。

もう一つのポイントは自分で決められる感覚を持たせることです。

具体的には、子供に「〇〇くん/ちゃんはどうしたい?」「xxと△△があるけれどどっちが楽しそう?」など自分で選択する質問を投げかけましょう。

そうすることで、子供は自分で何かを選択し最後までやり遂げる習慣を身につけることができます。

グリットを身につけるには、「親自身が挑戦姿を見せること」「子供自身に選択をさせること」が大切なんだね!

*GRITやGRITの伸ばし方についてはこちらの記事でより詳しく解説しています

 

非認知能力に含まれる能力③:内発的動機付け

内発的動機付けは
・モノ
・お金
などの外発的な要因ではなく、
・楽しいからやる
・意味があると分かっているからやる
など、本人の心の中から生まれる欲求によって何かに挑戦する能力です。

お菓子などで子供のやる気を起こさせる光景を目にしますが、これは教育の観点からは微妙です。

なぜなら、お菓子などの外発的な要因でやる気が起きることが当たり前になると、反対にお菓子がない時には頑張らなくていい、と無意識のうちに考えてしまうからです。

*内発的動機付けについてはこちらの記事で図解を入れながら詳しく解説しています

内発的動機付けとは?子どものやる気は内側から引き出そう!【外発的動機付けとの違いも解説】

この内発的動機付けを習慣にする方法は、自己効力感とGRITを身につける方法のミックスです。

子供が何かに挑戦したら、その結果ではなく挑戦したという行動自体を具体的に取り上げて褒め、さらには次に挑戦する選択肢をなるべく多く提示して子供自身に決めさせるのです。

その関わりを繰り返す中でお菓子がなくても頑張れる子供に成長していきます。

1,子供の結果ではなく努力や家庭や行動を具体的に褒める
2,子供に複数の選択肢を提示して、何に挑戦するか自分で決めてもらう

褒め方の工夫と自分で決めさせることを繰り返して、お菓子がなくても頑張れる子供に育てましょう!

こちらの記事で非認知能力を伸ばす6つの遊びについても紹介しているので、ぜひ読んでみてください。

 

非認知能力を身につける際の2つの注意点

子供の非認知能力を身に付ける際には2つの注意点があるので最後にそれらを紹介します。

注意点①:一つの能力を伸ばすのではなく、組み合わせが重要

非認知能力に該当する能力を複数取り上げましたが、それらはどれか一つを伸ばせばいいというものではありません。

例えば、継続する力(GRIT)はあるけれど、外発的な動機付け(お菓子やお金など)がないと何にも挑戦しない子供、もしくは大人はおそらく社会的な成功を手にすることができないですよね?

そのような状態に陥らないように、複数の能力を一緒に伸ばすことを意識しましょう。

何をすればいいか混乱してしまった方は、先述した下記をとりあえず今日から実践してみてください。

 

注意点②:非認知能力は、心理的安全性の上に成り立つ

必死に子供と積極的に関わっても、子供があなたに対して心を許している状態でなければ子供の非認知能力を伸ばすことは難しいです。

上記のように「相手が自分に対して心を許している状態」を「心理的安全性が築かれている」と言います。

そんな「心理的安全性」を築くためにはどうしたらいいでしょうか?

まずは「心理的安全性」を損なうマイナス行動を辞めてみましょう。

具体的に、暴力や暴言は論外ですが、他人の子供との比較やできないことについて極端に言及することもNGです。

「あの子は数学の点数が90点なのにあなたは〇〇」
「近所の△△君はもう自転車に乗れたらしいよ」
など他人との比較の中で子供を評価する言動は心理的安全性を損ないます。

子供の個性を認めて、一緒に伸ばしていく姿勢を何よりも重視しましょう。

幸せになる勇気』で言われていますが、「愛」とは2人で成し遂げるべき課題なのです。

 

出典

最後まで記事を読んでいただきありがとうございました。
本記事を書く上で参考にした文献や論文を下記に記載します。
特に上の載せている本ほと簡単で3時間程度で読めるものなので、ぜひ読んでみてください。

もしご要望が多ければ、それぞれの本の要約も今後書いていこうと思います!

私たちは子どもに何ができるのか――非認知能力を育み、格差に挑む
「非認知能力」の育て方:心の強い幸せな子になる0~10歳の家庭教育
家庭、学校、職場で生かせる!自分と相手の非認知能力を伸ばすコツ
成功する子 失敗する子 ― 何が「その後の人生」を決めるのか
「学力」の経済学
幼児教育の経済学
モンテッソーリ教育・レッジョ・エミリア教育を知り尽くした オックスフォード児童発達学博士が語る 自分でできる子に育つ ほめ方 叱り方
やり抜く力
EQ こころの知能指数 (講談社+α文庫)
やり抜く力
he Productivity Argument for Investing in Young Children(James J. Heckman and Dimitriy V. Masterov)
非認知能力(社会的情緒)能力の発達と科学的検討手法についての研究に関する報告書(遠藤)
非認知能力に関する研究の動向と課題 ―幼児の非認知能力の育ちを支えるプログラム開発研究のための整理―(西田、久保田、利根川、遠藤)

 

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