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- そもそも創造性とは?
- 創造性はなんで大切?
- 子どもの創造性はどうやったら伸びる?
- 子どもの創造性を育むためにやっちゃいけないことは?
本記事ではこのような疑問に答えます。
記事を書いている僕は、非認知能力に関する教育サービスの開発(3年)や、中高生の非認知能力を伸ばすキャリア・お金の教育(プロボノ)などをしています。
創造性は、新しく価値あるものを生み出す性質
まず、創造性の定義を確認しましょう。
『創造性研究の基礎』(恩田 彰,1971)では、創造性は下記のように定義されています。
ある目的達成または新しい場面の問題解決に適したアイデアを生み出し、あるいは社会的・文化的(個人基準を含む)に価値あるものを造り出す能力、およびそれを基礎づける人格特性
簡単に説明すると、創造性は「新しく価値あるものを生み出す性質」と言えるでしょう。
英語では”Creativity”と訳されますが、物理的なものしろ、考え方にしろ、新しいwebサービスにしろ、アイデアに基づいて新しいものをつくり出すような性質が創造性。
難しく聞こえますが、創造性は、歴史に残るアーティストや有名企業のCEOだけに必要な性質ではなく、これからを生きる全ての子どもにとって必要、かつ全ての子どもが身につけることが可能なのです。
創造性は、AI時代に必須の性質
そんな創造性は、これからのAI(人工知能)時代で価値を発揮するためには必須の性質。
よく言われる話ですが、AIの発展により、繰り返し業務など目的とその目的に辿り着く方法に規則性がある仕事はAIに代替される可能性が高いです。
そうなると、コンピューターにできないような、「新しい価値」を創造できる人材に対する需要が高まっていきます。
実際、マサチューセッツ工科大学(MIT)メディアラボのミッチェル・レズニック教授がインタビューの中で、「AI時代に成功するための最善策は、コンピュータができない創造的思考を発展させることだ。」と発言しているなど、創造性の大切さは社会人を中心に認められてきているのです。
「生涯幼稚園」が創造性のカギになる MIT教授が提唱(Forbes Japan)
創造性は4歳から4歳半が最も伸びる。ただし一生伸びる性質でもある。
そんな創造性が最も伸びると言われているのは、4歳から4歳半の間。
根拠としては、飯田裕子氏の論文、『幼児の創造性に関する基礎的研究』が挙げられます。
飯田氏は、創造性に関する複数の研究をまとめて分析し、上記の結論を導き出しました。
人は、3歳までに生活上必要な基礎能力や知識を身につけ、それを土台に4歳以降で新しい世界を見つけ切り開いていこうとする性質を発揮していくそう。
4歳になると、身体を自由に操ったり、他人の存在を意識したりする中で想像する力が養われていきます。
想像力は、創造性のコアとなる力なので、それが育まれる4歳くらいの時期に創造的な活動を繰り返すことで子どもの創造性が磨かれるのです。
また、上記のメタ分析では創造性は5歳ころには一時的に低下すると記されています。
5歳から12歳は「潜伏期」と呼ばれ、その時期には社会からの圧力や固定観念などの制約を受けやすくなるため創造性が低下するのではないか、と考察されています。
ここまで読んでいただいた方の中には、「12歳以降や大人は創造性が育たないのか?」と不安に感じる方もいるでしょう。
結論、創造性は大人になっても育つので安心してください。
先ほど紹介したMITのミッチェク教授は、「適切な働きかけをしたり、適切なプロセスを通すことで、創造性は年齢を問わず高められる。」と述べています。
以降で、どのような働きかけや条件下で子どもの創造性が育まれるのか?反対に子どもの創造性の成長を阻害する態度はあるのか?ということについて解説していきます。
子どもの創造性を育む5つの条件【メタ分析より】
先述した『幼児の創造性に関する基礎的研究』の中で飯田氏は、複数の創造性に関する研究を分析し、「子どもの創造性を育む5つの条件」をまとめています。
まず、同論文に記載されている、子どもの創造性を育む”原則”を紹介したのち、5つの条件を解説します。
【原則】全ての子どもは創造性を持って生まれる
多くの創造性研究では、「さまざまなテクニックを用いて創造性をなんとか伸ばす」というよりも、「子どもの創造性が伸びやすい”環境”を整備する」というアプローチが支持されることが多いです。
というのも、子どもには元々創造的に物事を考える性質が備わっているから。
お子さんと関わることが多い方はわかると思いますが、大人から「創造的な活動をしなさい!」と言わなくても、公園や家、友達となどさまざまな遊びの中で勝手に創造的な活動をしていることが多いのではないでしょうか?
だからこそ、”環境”の整備が重要。
“環境”とは具体的には、”周囲の大人”、すなわち”親”です。
実際、飯田氏も論文の中で以下のように述べています。
周囲の人たちの態度、環境が幼児の創造性に大きな作用を及ぼしているものと考えられる
先述したように飯田氏は、メタ分析を行う中で親が意識するべき「子どもの創造性を育む5つの条件」をまとめているので、そちらを紹介します。
- 型にはめずに、自由にのびのび行動させる
- 広い知識と豊かな経験を増やす
- 子どもの自主性を養う
- よく遊ばせる
- 子どもに対して理解的、受容的な態度を示す
1,型にはめずに、自由にのびのび行動させる
1つ目の条件は、子どもが自由に伸び伸び行動できる状況かどうか、というもの。
この際の「自由」とはなんでしょうか?
多様な考えが認められる、自分の意見をむやみに否定されずに聞いてもらえる。
そのような状況で子どもは「自由」を感じます。
そのため、日頃から子どもの意見や行動を受け止める回数を増やすことが重要です。
例えば、子どもが、バスを見て「消防車だ!」と言ってもすぐに否定しないなど。
すぐに「違うよ、あれはバス」と教えるのではなく、「そっか!○○くん/ちゃんには消防車に見えたんだ!」と一度受け止めてあげてください。
その上で、「消防車はどんな乗り物?」「バスはどんな乗り物?」「じゃああれはバスと消防車どっちかな?」など自分の頭で考えながら答えを出すようなコミュニケーションがベター。
反対に、自由な発想のためには画一的な考えを押し付けるのはNG。
「投資は危険」「いいから勉強しなさい」など、論理的な説明や、子どもの意見を反映した上での議論なしに意見を押し付けると、子どもの創造性は失われてしまいます。
2,広い知識と豊かな経験を増やす
2つ目は、知識や経験の量を増やしましょう、というアドバイスです。
ビジネス界隈ではよく言われますが、ゼロから何かが生まれることは稀。
イノベーション論で有名なピーター・ドラッガー氏などは、「創造は既存の何かの組み合わせ」だと主張しています。
ただ、子どもはまだまだ経験も知識も少ない状態。
だからこそ、創造のタネ、つまり組み合わせの元になるような知識や経験を増やしてあげる必要があるのです。
組み合わせる情報が極端に少ないと、人はなかなか創造的になることができません。
具体的には、子どもが関心を持った物事を実際に経験できる場所で行く回数を増やすと良いでしょう。
例えば、子どもがテレビで牛に興味を持ったら、子どもと一緒に牧場に行って乳搾りをするなど。
上記のように、誰のフィルターにもかかっていない体験を「一次体験」と呼びますが、そんな一次体験を増やしてあげる必要があるのです。
また、そんな一次体験を増やす活動は家族にとって大切な思い出になります。
余談ですが、筆者は3歳くらいの時に両親に連れていってもらったマザー牧場で食べたソフトクリームの衝撃的な美味しさをいまだに覚えており、大切な思い出です。
とはいえ、毎週末遠出するのは大変だと思います。
そんな時は、図書館で一緒に絵本を読み、間接的に世界を知ることがおすすめ。
一次体験ではないですが、大人が読書で知識を増やすように、図書館は子どもにとっては新しい世界への入口なのです。
3,子どもの自主性を養う
高い創造性が育まれるきっかけは、好奇心や意欲。
創造性は何かを生み出す活動を繰り返す中で磨かれるもの。
子どもが何に対しても好奇心や意欲を持てなければそういった活動がそもそも始まらないですよね?
実際、MITのミッチェル教授は、「創造的思考者として成長するための基本原則」として以下4つをあげています。
- Projects:プロジェクト
一時的ではなく、計画がある連続的な取り組みに挑戦する - Passion:情熱
学校や親からの強制ではなく、本当に自分が情熱を感じるものに取り組む - Peers:仲間
学び合う仲間をつくる - Play:遊び
リスクを冒して新しいことに挑戦し、限界を試す中で、成功や失敗から学ぶ
原則に情熱が含まれていることからわかるように、好奇心や意欲を重視する必要があるのです。
上記の4原則を意識しながら、お子さんが興味を持てるものを一緒に探してあげてください。
4,よく遊ばせる
飯田氏は、遊びと創造性の関係にも言及しています。
実際に、幼少期によく遊んでいた子どもは創造性や自己効力感などのスコアが高くなる傾向があります。
子どもは、遊びの中で同じようなことを繰り返しているように見えても、前とは変わったことに焦点を当てて楽しんでいるなど、細かいところで創造性を発揮していることは多いもの。
だからこそ、幼少期には、エリート教育や詰め込まれた習い事よりも、のびのびと遊ぶことが重視されるべきなのです。
例えば、『非認知能力を伸ばすおうちモンテッソーリ77のメニュー』には、非認知能力を伸ばすために家でできる遊びが77個も紹介されています。
もちろん友達と自然が多い公園で遊ぶなどはぜひやっていただきたいのですが、「コロナ禍でなかなか外出は、、」という方は上記のような本を参考にしてみてください。
5,子どもに対して理解的、受容的な態度を示す
創造性に限らない話ですが、子どもは周囲の大人から自分の意見や存在が受け入れられることによって伸びていきます。
ビジネスシーンだと分かりやすいですが、会議で自分が意見を言う度に否定されたら、「もういいや、発言辞めよう」となりますよね?
子どももそれと同じ、むしろ「敏感期」と呼ばれる0〜6歳の子どもは上記のような感覚をより鮮明に感じ取り、その後の人格形成に影響していきます。
だからこそ親は、子どもの長所を認め育てる、時間がかかっても子どもが自分から発言したり活動したりすることを待つ、など理解的・受容的な態度を示す必要があるのです。
また、子どもが親に対して安心を感じるためには「アタッチメント」が形成されている必要があります。
アタッチメントについてはこちらの記事で図解を入れながら詳しく解説しているのでぜひご覧ください。
子どもとの間にアタッチメントを形成する方法を4ステップで解説【今日から使える!】
知らない内に子どもの創造性を奪ってしまう3つの態度
先ほどは、子どもの創造性を育む方法や条件を紹介しましたが、今度はその逆。
子どもの創造性を育むためにやってはいけないことを3つ紹介します。
元になっているのは、先述した飯田氏の論文でも紹介されている、MIT創造工学研究室のジョン・アーノルド(John.E.Arnold)が提唱した、創造性を阻害する3つの要因です。
- 認識の関(Perceptual blocks)
- 文化の関(Culutual blocks)
- 感情の関(Emotional blocks)
①認識の関(Perceptual blocks)
1つ目は、「認識の関」呼ばれる阻害要因。
認識の関は、歪んだものの見方や物事を正しく把握することを妨げる要因です。
例えば、基礎的な知識の不足や、世の中のさまざまな物事に気づきにくい環境など。
日常シーンに当てはめてみると、下記のようなパターンが認識の関に該当するでしょう。
- 子どもが関心を持った物事を体験できる場所に連れて行く頻度が極端に少ない
- 図書館などの文化施設に連れていく頻度が極端に少ない
『私たちは子供に何ができるのか – 非認知能力を育み、格差に挑む』では、文化施設にいく頻度が低いなど、子どもの知的欲求が満たされない環境で育った子どもはストレスを感じやすいという研究結果が紹介されています。
②文化の関(Culutual blocks)
「文化の関」は、人が教え込まれ、従ってきた社会の制度、習慣、価値などから生まれる制約要因。
その人の生活環境の中で当たり前だったことや無意識の内にとっていた行動、と考えればわかりやすいかと思います。
例えば、下記のような要素が文化の関に該当します。
- 型にハマった考え方を押し付ける
- 同調性を強いる社会的な圧力
- 競争のしすぎ
この文化の関を避けるためには、子どもを一人の人間として扱うことはもちろん、価値観や出自の異なる人と話す場の設定や読書(絵本も含む)で多様な考え方を知ることなどが有効でしょう。
③感情の関(Emotional blocks)
3つ目は、「感情の関」。
人の感情、特にマイナスの感情から生まれる阻害要因です。
人から馬鹿にされたり、拒否されたりということが続くと、人は自分の感情や意見を表に出さなくなってしまいます。
創造性は、自分の情熱をベースにした活動を繰り返す中で育まれるので、感情や意見を表に出さないと必然的に創造性の成長が阻害されてしまうのです。
下記のようなものが感情の関に該当するので、お子さんが該当する感情を抱いていると感じたらじっくりと話を聞いてあげるなど対処をしましょう。
- 不安:変化や新しいことへの挑戦を不安に感じる
- 恐れ:「これを言ったら馬鹿にされるかも」と恐れる
- 自信のなさ:「自分が考えることなんてたかが知れている」という無能感
- 劣等感:他人に比べて自分は劣っているという感覚
- 内発的動機の不足:人からの強制やご褒美がないと頑張れない
*内発的動機付けについてはこちらの記事で図解を入れながら詳しく解説しています
内発的動機付けとは?子どものやる気は内側から引き出そう!【外発的動機付けとの違いも解説】
まとめ:子どもが元々持っている創造性を大切に!
いかがでしたでしょうか?
創造性の定義や重要性、そして創造性を伸ばす・阻害する要因についてご理解いただけたでしょうか?
途中で書きましたが、子どもは本来創造性を持った生き物です。
それが、画一的な答えを求められたり、自分の考えを否定されたりというマイナスな体験を繰り返す中で創造性の成長が阻害されたり、創造性が失われていったりしてしまうのです。
子どもに関わるあなたは、ぜひ「元々子どもが持っている創造性を最大限活かせる環境をつくろう!」という意識を忘れないであげてください。
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