アンルクーリングやホームスクーリングなど、「〜スクーリング」と呼ばれている言葉の違いが知りたい。
本記事では、このような悩みや疑問を解決します。
記事を書いている僕は、非認知能力に関する教育サービスの開発を3年ほどしたり、プロボノとして中高生の非認知能力を伸ばすキャリア教育をしたりしています。
「〜スクーリング」一覧
先に、下記の概念について表形式でまとめたものを添付します。
- オルタナティブ教育
- アンスクーリング
- ホームスクーリング
- ワールドスクーリング
- デスクーリング
- アンブレラ・スクール
表で全体像を把握してから以降の各教育手法の細かい説明を読んでいただくとわかりやすいかと思います。
オルタナティブ教育
オルタナティブ教育(Aiternative education)
いきなり「〜スクール」ではないのですが、アンスクーリングやホームスクーリングの元となる概念であるオルタナティブ教育を最初に紹介します。
日本語では「代替教育」「非伝統的な教育」「教育選択肢」などと訳されます。
オルタナティブ教育は、従来とは異なる新しい運営・進級制度及び教育の科目を採用する教育手法の総称です。
要する新しい制度や手法を試している教育を全般的にオルタナティブ教育と呼んでいるのです。
オルタナティブ教育には様々な概念や手法が含まれています。
例えば、下記のような形態がオルタナティブ教育に該当します。
- セパレート・スクール
- チャーター・スクール
- ギフテッド教育
- アンスクーリング
- ホームスクーリング
- 無認可校(フリースクールなど)
またオルタナティブ教育の中でも特に子供の興味関心を重視する教育法は、子供の「非認知能力」を伸ばすことを目的にしたものが多いことも特徴です。
*非認知能力についてはこちらで詳しく解説しています
アンスクーリング
アンスクーリング(Unschooling)
アンスクーリングは日本語では「反学校」「非学校教育」と訳されます。
アンスクーリングという言葉を作ったのは教育者であり作家のジョン・ホルトです。
ジョン・ホルトはアンスクーリングを「保護者が子供に勉強を指示するのではなく、子供が自身の興味・熱意をベースに深く探究を行う教育方法」と定義しています。
保護者は勉強内容の指示や命令ではなく、
・子供が興味を抱くことができる物事の発見
・興味を持ったテーマをベースに学びを設計する
サポーターのような役割を果たします。
保護者を含む大人は、あくまで”サポーター”で、教育のコントール権は子供にあります。。
アンスクーリングで大切な概念は「子供の興味・熱意」「経験による学び」です。
大人が「算数の教科書をやりなさい」と命令するのではなく、興味を持ったYouTuberの収入を考えてみる時に数字について学ぶなどです。
後に紹介するホームスクーリングとの最大の違いは、「子供の興味をベースに体験を始めるか?」という点です。
アンスクーリングにはカリキュラムや大人(教師や保護者)からの指示がなく、教育を行う公共施設も必要がないのです。
哲学的には、現在の学校で行われているような一斉授業とは一線を画する学びを重視し「興味関心を元に自分の頭で考えられる人材の育成」を目指しています。
この「興味関心を元に自分の頭で考えられる人材」は『思考の整理学』では「飛行機型人間」と称されています。
「飛行機型人間」及び『思考の整理学』についてはこちらの記事で詳しく説明しているので、ぜひご覧ください。
ホームスクーリング
ホームスクーリング(homeschooling)
オルタナティブ教育の形式の一つです。
ホームスクーリングは、アンスクーリングのように子供の興味のみをベースにするのではなくカリキュラムに従う手法です。
ただし学ぶ場所が学校ではなく家庭なのです。
具体的には、カリキュラムで定められた教科書などを用いながら、保護者や家庭教師が教育を行います。
また現在はオンライン授業などインターネットの教育サービスを使うことも多くなっています。
日本では原則ホームスクーリングは認められていないのですが、不登校児童に対するホームスクーリングは特例として認められるケースも存在します。
ワールドスクーリング
ワールドスクーリング(Worldschooling)
ワールドスクーリングは、アンスクーリングの派生系です。
アンスクーリングと同様に、カリキュラム通りの教育ではなく子供の興味関心をベースにしています。
ワールドスクーリング最大の特徴は「世界中が教室になること」です。
具体的に説明すると、ワールドスクーリングは家族で旅をしながら、旅先での経験とオンライン学習を組み合わせながら教育を行う手法です。
主に海外を旅しながら、現地で出会った出自も価値観も異なる人(専門的には「異質な他者」と言います)と交流する中で多様な価値観や知識を身に付けていくのです。
ただワールドスクーリングに対しては以下のような批判や疑問もあります。
- 学校に通わないと子供の学力が伸びないのでは?
- 同年代の友達と関わらないと社会性が身につかないのでは?
- 特定のコミュニティーに属さないことで子供に精神的な悪影響があるのでは?
これらの懸念に対する解説はこちらの記事でしているので貼っておきます。
デスクーリング
デスクーリング(deschooling)
デスクーリングは日本語では、「脱学校」「非学校」と訳されます。
オーストリア出身の哲学者イヴァン・イリイチの造語であり、従来の学校の「教えられる」「学ばされる」という受動的、強制的な関係を否定する概念です。
デスクーリングは学習に対する能動的な態度を推奨しています。
つまり、「自ら学ぶ」「報酬ではなく内発的動機に基づいて学習する」という行動が大切ということです。
*内発的動機付けについてはこちらの記事で図解ありで詳しく解説しています
内発的動機付けとは?子どものやる気は内側から引き出そう!【外発的動機付けとの違いも解説】
イヴァン・イリイチは、上記のような能動的な学習を実現し親の学びを取り戻すために、学校制度の撤廃を提言しました。
学校組織に対する反体制思想を持つ点において、アンスクーリングとは異なります。
アンブレラ・スクール
アンブレラ・スクール(Umbrella school)
アンブレラ・スクールは、上記のようなオルタナティブ教育を受けている児童、特にホームスクーリングを受けている児童がカリキュラムに沿った教育を受けているかを監督する学校です。
監督の手法としては、
・ホームスクーリングの児童を集めて授業を行う
・学力テストの受講
などが存在します。
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