『直感と論理をつなぐ思考法 VISION DRIVEN』について紹介ラストです!
今日は、第一回、第二回の記事を踏まえ、「ビジョン・ドリブン思考」の核心へと迫っていきます!
⑦ 「組替」で発想の凡庸さから脱する
⑧ 表現(プロトタイピング)のポイント
⑨ 妄想を社会の文脈から捉えなおす –真・善・美-
「どんなに考えても、発想が普通過ぎてイノベーションを起こすようなアウトプットが出せない。」
これは多くの人に共有する悩みだと思います。この状態を脱するにはどうすればいいのでしょうか?
本書では、他人の視点を入れ、そのフィードバックを受けてもう一度発想しなおす(作ったものを分解して組替える)ことを推奨しています。
「行為としてのデザイン」には、対象を構成要素に分解したうえで、再び組み立てなおすというニュアンスが含まれており、そもそもデザインとは、「組替そのもの」だと筆者は考えている為です。
分解を行っていく際に、対象の構成要素がはっきりしないままでは、組み替えが行えません。
その為、自分の内側から出てきた妄想を、可能な限り細かく「分解」し、全体がどのようなパーツから成り立っているのかを把握する必要があります。
以下に、詳しい分解のステップを紹介していきます。
何か新しいことを生み出そうとするとき、僕達はつい「再構築」=新しいアイデア作り、にばかり注力しがちです。
しかし、より価値の高いイノベーションを集団で生み出すためには、既存のアイデアの中に隠れている「あたりまえ」を洗い出し、パーツ分けする方が有効だ、と筆者は述べています。
具体的には、「常識」をリストアップしておくことで、従来の「あたりまえ」を壊すための余地が出てくるそうです。
例えば、ペットボトル型清涼飲料水には、「150円前後」「自動販売機やコンビニで買うもの」という「あたりまえ」が付着している、という具合です。
このように、「あたりまえ」をリストアップして際に出た視点をつなぐことで、これまでになかった切り口のアイデアが出しやすくなります。
本書に書かれている、「あたりまえ」を洗い出してそこからアウトプットを出す具体的な方法を紹介します。
ステップ2では、ステップ1で書き出した「あたりまえ」の中で「違和感のあるあたりまえ」をピックアップします。
ここで大切なコトは、多少強引でも
・ここっておかしいんじゃないか?
・いったい、どうしてこうなんだ?
という引っかかりを探すことです。
「違和感のあるあたりまえ」をピックアップできたら、そこに対して
・自分はどういうところに違和感を抱いたのか?
・何がそんなに引っかかったのか?
・どうすると違和感がなくなりそうか?
を探ります。
最後にやるべきことは、書き出した全ての「あたりまえ」に対して、機械的に、「そのあたりまえの”裏”は何か?」ということを考えることです。
ポイントは、アイデアの良し悪しを考えずに、とにかく機械的に出すことを心がけることです。
具体的な手法としては、「あまのじゃくキャンパス」というものが紹介されています。
ここまでが、「分解」のステップになります。
さらにここから、「再構築」についても説明していきます。
「あまのじゃくキャンパス」で出した一番外側の「非常識」を、「アナロジー思考」という手法を使ってより広げていくのがこのステップです。
「アナロジー思考」とは、未知の事柄A(ターゲット)と既知の事実B(ソース)があったとき、両者の間の類似性Cを元に、「Aもこういう性質を持っているだろう」と推論を働かせる思考法です。
この、アナロジーを誰かにわかりやすく伝える方法が「メタファー(比喩)」です。
例えば、「うちの職場は動物園そのものだな」という発言に共感を抱く人は、「うちの職場」と「動物園」の間に、「メンバーがバラエティー豊かで、管理するのに手間がかかる」という類似性を乱している可能性があります。
アイデアの組替を行う上では、このメタファーを作る力、その背後にあるアナロジーを見抜く力が重要だ、と筆者はのべています。
アナロジー思考をしていく際には次の3つのハードルがあり、ステップ2ではここを確認し、クリアしていきます。
1,ターゲットの構成要素がつかめていない
「類似性」「共通点」の発見をするためには、大前提として、ターゲットとなる発想・問題の構成要素が明確になっている必要があります。
2,ソースの引き出しが少ない
ターゲットの類似性がクリアになったとしても、それらを結びつける既知の事柄(ソース)が少ないと、類似性の発見が起こりません。
つまり、ある程度の知識や経験が必要ということです。
このソースを補う有効な方法は、人と話すことです。
特に異分野の人との会話を重要視した方がいいでしょう。
3,相違点ばかりにフォーカスしてしまう
僕たちは普段「違い」を発見することになれていて、「似ている点」を発見することには慣れていません。ここでも、ビジュアル化が役に立ちます。
長々と考えていても、どのみちいいアウトプットは出ません。
重要なことは、「フォーマットを決め、一定の制限の中でまとめる」ことです。
四字熟語、ネーミング、広告ポスター等一定の制限をつけてあげることで、手を止めることなく再構築を行っていきます。
このように、「分解」と「再構築」をさまざまなツールや思考を駆使しながら行っていくことで、「アウトプットが普通過ぎる」という状態から抜け出します。
組替(分解+再構築)を繰り返しながら凡庸さから抜け出した後は、実際にそのアイデアを形にしていく段階に移ります。
それが、「プロトタイピング」です。
「プロトタイピング」は最終的な成果物ではなく、そこから有効なフィードバックや気づきを引き出し、次なるバージョンアップへつなげていく為の手段です。
その際に気を付けるのが、以下の3点です。
2,表現を「シンプル」にする
3,表現に「共感の仕組み」をつける
まずは、表現をする「習慣つくり」「動機付け」をすることが必要です。
そのためには、「とりあえずPC」をいう姿勢はNGです。
なぜなら、プロトタイピングの基本は「Build to think(手を動かして考える)」だからです。
いきなりPower Pointを立ち上げることは手を止めることに繋がります。
プロトタイピングとして有効な手段の一つは、「手書き×紙」ですが、その際も箇条書きなどではなく、図や絵、ポストイットを使った「可動式メモ」を活用することが有効です。
最初に紙に手書きをするメリットの一つは、「手が止まる時間を短くできる」ことですが、もう一つ、紙に書いたものをデジタル(Power Point等)で清書することが、デザイン思考において重要な「イタレーション」にあたる為です。
「イタレーション」とは、「具体化→フィードバック→具体化」というサイクルを与えられた時間の中で繰り返すことですが、紙からデジタルという流れがまさにこれにあたります。
具体的には、
I)紙でプロトタイピングする
II)Power Pointにしてみて自分の発想/アウトプットの違和感に気づいたり改善点を見つけたりする
III)もう一度紙に戻ってプロトタイピングする
という形で、紙からデジタルに移行する際に自分で自分のプロトタイプにフィードバックを与えることができるのです。
つまり、手書きすることで、早い段階で、「具体化」の段階を踏むことができます。
もちろん、それを人に見せて第三者のフィードバックを得ることができればなお良しです。
予測不能なVUCAの時代においては、「いかに早く失敗するか」が成功の一つのカギになります。
プロトタイピングの魅力は、前述した「早い段階で失敗できること」に加え、表現の完成度と並行して、アイデアに対する自信・手ごたえを高めていけることにもあります。
その為、プロトタイプを最初に見せる相手選びは重要であり、アイデアを理解してくれ、さらにポジティブな反応をくれる人に見せる方がいいとされています。
より具体的に言えば、「ほめてくれる人」「新しい物好きな人」「ノリのいいひと」です。
そういった人を常に周りにおいておくことも、広く捉えればデザインなのではないか、と僕は本書を読んで感じました。
また、人に見せる際には、一瞬で伝わる方法を模索すべきでです。
具体的には
・一瞬で伝える絵を用意すること
・相手の知識との接点をつくること
があげられます。
特に、絵でノートを取ると文字と比べて記憶定着率が29%高いといわれており、言葉や文字より優先してビジュアル化していくことの重要性がうかがえるでしょう。
「相手の知識との接点をつくる」というのは、メタファーを使いこなすことです。
プロトタイプを人に見せる際には、相手の知識を考え、これは要するに「○○のような××です」というメタファーを含んだ説明から入るのが良いでしょう。
プロトタイピングの最終目的は「人を動かすこと」だと筆者は述べています。
人に動いてもらうためには「共感」が必須であり、「共感」を得られるプロトタイプを目指すべきです。
しかも、「うん、いいね!」レベルの共感ではなく、プロトタイプを見せられた側が、思わず身を乗り出して、「私にも手伝わせてくれませんか?」というレベルを目指すべきだそうです。
上記のレベルに達するために確認するべき項目は、
・担当者が本気かどうか?
・アイデアが具体的かどうか?です。
その為には、「どうなるか?」の筋書きを見せることが有効であり、ストーリーによって「自分が考えて商品・サービスが、ユーザーの生活・人生をどう変えるか?」をイメージさせる必要があります。
具体的には、「英雄の旅フレーム」という手法が紹介されています。
これは、「主人公」「試練」「メンター」という構成要素をめぐって「現実~宝を得て帰還」というストーリーが展開されていくフレームワークです。
このように、「動機付け」「シンプルさの追求」「プロトタイピング」の3つのステップを踏むことで、プロトタイピングは、「人を動かす武器」にまで進化します。
筆者は、ビジョン思考の行きつく先を、「社会の問題解決」だと考えています。
その上で本書では、ハーバード大学発達心理学者はワード・ガードナーの「真・善・美」という価値基準をビジネス・教育に取り入れていくべき、という考えを紹介しています。
具体的には、ものすごい速度でテクノロジーが進化している現代だからこそ、「なんのためにテクノロジーを活用するのか?」という価値観をしっかりと持った人材を育てるべき、という内容が含まれているのです。
その為に、本書では、「真・善・美」それぞれに要素に関する問いを自分に対してしてみることを推奨しています。
例えば「真」。
絶対的に正しいといえるものが存在しない世の中で
・あなたの妄想(ビジョン)にとって正しい(真である)ものは何か?
という問いが考えられます。
そして「善」であれば
・あなたのビジョンはどんな社会をつくるためのものか?
・あなたのビジョンに反対する人がいるとすればそれはどんな人か?
・あなたの妄想をどのように変えればより多くの人が協働できるようになるか?
・あなたのビジョンが今後の社会で「共通目的」として意識されるためには何が必要か
・あなたのビジョンが実現された際には、どんな人が幸せになる姿を思い浮かべているのか?
等です。
また、「美」であれば、
・あなたにとって美しい物は何か?
・反対にあなたにとって不快なものにはどんな共通点があるか?
・あなたのビジョンに人々が魅力を感じるとすればそれはどのような点か?
といった問いです。
このような「問い」を通して自らのビジョンを磨き、世の中に訴えかけていくと、当初は、「ただの妄想」だったものも、いつしか、「社会問題の解決」も含めた理念に代わっていくとしています。
ただし、「社会課題の解決」のような大きなテーマに取り組むことは挫折に繋がる可能性もあります。
そのため、まずは「公共心」以前の「個人の内面から湧き出る得体のしれない妄想・直観」からスタートすることが大切だと本書では述べられています。
その意味で、これからの時代で大切なのは、「世界を救う」等の場所から始めるのではなく、まずは自分自身の「妄想」も素直になることです。
まずは自分の妄想と向き合うことが本当に社会を変えたい人の為の思考法、という話で本書は締めくくられています。
「自分の妄想や直観に素直になること(=ビジョン思考)が本当に社会を変えたい人の為の思考法」という言葉が僕にとって衝撃でした。
ユニリーバーの「Real Beauty sketch」に代表されるような社会課題解決に繋がるアウトプットを作ることを目的にマーケターになった僕は、入社してから大きい視点(=社会課題の解決)ばかり考えて、「自分の妄想・直観」という視点が欠けていていた気がします。
その意味では、本書の、ビジョン思考の本質を理解することは、僕の大きな目的をかなえる近道にもなると思うので、まずは、本書で紹介されている本質を理解した上で、ツールを駆使しながら自分の直観を磨いていきます。
また、こちらの記事でマーケティングに関する本を消化しています。
今回の記事に興味を持っていただいた方はぜひ読んでみてください。
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