【要約】『THE・MODEL』営業・マーケティングの科学的方法論

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 マーケティングオートメーション、データドリブン・マーケティング、カスタマーサクセス。

 新しい技法や概念が次々と生まれる中、大切なのは、その根幹にある考え方、そして人と人のつなぎ方です。そういった項目の具体的方法までが書かれた一冊『THE MODEL』の要点を説明します。

本記事の内容
①  マーケティングオートメーションはなぜ必要か?
②  顧客の「リサイクル」
③  顧客の「スコア付け」

①  マーケティングオートメーションはなぜ必要か?

 前提から始めます。そもそもマーケティングオートメーションとはどういう意味でしょうか?innovaさんのサイトの定義をお借りします。

「マーケティングオートメーション(Marketing Automation)」とは、企業のマーケティング活動において、旧来は人手で繰り返し実施していた定型的な業務や、人手では膨大なコストと時間がかかってしまう複雑な処理や大量の作業を自動化し、効率を高める仕組みのことです。また、そのような自動化を実現するソフトウェア・ツールを指す場合もあります。

 ポイントは、「自動化」「効率を高める」というところかと思います。

 そして、上記の考えを踏まえた、マーケティングオートメーションの利点は大きく以下の二つに分かれます。

  1. マーケティングコスト削減
  2. 顧客エンゲージメント向上

 一つ目から説明します。下図をご覧下さい。

 これまでのマーケティング~営業フローにおいては顧客をステージ毎に分け、いかに次のステージに進めるか、もしくはいかにリードを増やすか、マーケティング用語を使うと、「いかに歩留まりをなくすか?」、「いかに間口を広げるか?」が論点でした。

 ただこれだけでは不十分です。

 なぜなら、どちらも膨大な費用が掛かるのと、歩留まりを下げることには限界があるからです(専門的には、「限界効用点」という)。

 そこで生まれてきた考えは、「各ステージ事に発生している失注顧客の再顧客化」です。

 次のステージに進まなかったリードにもう一度適切なタイミングでアプローチして、購入まで至らせる、という手法です。なぜここが大切かというと、「未商談・もしくは失注リードにはこれ以上獲得コストがかからない(*さらに時間がたてばたつほど増えていく)」為です。簡単に言うと、一度は興味を持ってくれた人であるため、再度認知を取って興味を持たせて…、というフローを踏ませる必要がないのです。

 ただ、上記の考えを実現するのは、下記の点をクリアする必要があります。

  • 未商談・失注顧客を識別してアプローチ可能な状態にする
  • 一度興味を持ったが脱落した層をいかに再活性化するか

 「未商談・失注顧客の識別」は、営業等から大量に送られてくるリード情報を瞬時に識別し、ステージ管理する必要があります。この課題を解決するために生まれたものがマーケティングオートメーションツールになります。つまり、マーケティングオートメーションツールを使えば、上記の識別が可能になります。また、たいていのマーケティングオートメーションツールは顧客アプローチの為のチャネルと繋がっています。そのため、識別したステージ事のリードにそのままアプローチすることが可能になります。

 また、「一度興味を持ったが脱落した層をいかに再活性化するか」については、マーケティングオートメーションツールを使った、「未商談・失注理由を特定した施策の出し分け」が有効かと思います。興味を持ったけど、まだ商談をしていない、商談をしたけど失注した、このような人にはそれぞれ理由があります(*下図参照)。

 大切なのは、「未商談顧客」「失注顧客」とひとくくりにするのではなく、それぞれの理由毎に顧客を管理し、アプローチを変えてあげる、ということです。例えば、自動車メーカーの場合、失注理由が、「競合ブランドを先に買ってしまった」「価格が高い」という人では、再活性化する際のアプローチやメッセージは異なるはずです。例えば前者は、そもそも次の買い替え時期までアプローチを待つ必要があります。3年ほど経ち、自社の新商品が出たタイミングで、競合商品との差別化ポイントを明確に出す形で訴求するのがいいかもしれません。対して、後者は、今回より車格が下でより安いモデルが販売されたタイミングで再度アプローチするのが有効かもしれません。

 いずれにしても、顧客をステージだけでひとくくりにするのではなく、そこに「マインド」「モーメント」「インサイト」という概念を入れ、ブランド全体として、中長期的な視野も含めてどう顧客にしていくか?という考え方が重要ではないでしょうか?


②  顧客の「リサイクル」

 ①で説明した考えを本書では、「リサイクル」と呼んでいます。

 上記の考えがなぜ大切かというと、「新規を取り続ける」という考え方では、どんどんCPA(獲得コスト)が上がっていく一方だからです。

 例えば、エルメスが新商品を出したとしましょう。開始当初は、そもそもエルメスに興味がある人が接触的に広告をクリックし購入する為、獲得単価は安いはずです。しかし、時間が経つにつれ、そのようなユーザーはどんどん購入を完了してしまい、市場からいなくなります。すると、「これまでエルメスに興味を持っていなかった人に対して、エルメスブランド好感を持ってもらい、さらに新しい商品の購入まで至ってもらう」ということが必要になるわけです。そうなると当然、エルメスに元々興味があった層が購入し続けた時期よりも、獲得単価は向上します。

 だからこそ、「一度は興味を持ったけど、購入はしなかった」という「失注リード」の存在が重要なのです。

 再掲になりますが、その「リサイクル」の考え方を踏まえたレベニューモデルが以下になります。

 一つ重要なのは、「顧客ステージの設計」です。具体的に言うと、「どの指標をもって、顧客がそのステージにいると判断するのか」ということです。

 例えば「認知ステージ」いる顧客をデジタル上の指標でどう再現すべきでしょうか?
もちろん日本全国の人に、「その商品を知っているか?」をオンライン上で聞くことは不可能です。広告が表示されたら認知した、と判定しましょうか?思い浮かべればわかりますが、スマホに流れてくる広告なんて、大体スルーします。

 このように「顧客ステージの設計」は非常に難解な問題である為、最初は「このあたりだろう」という仮説ベースで定義しますが、その定義を固定するのではなく継続的に「検証」し、「妥当性」を判断し、「再定義」し続けることが必要なのではないか?と僕は考えています。
 市場に出してみて、ユーザーの反応を見て高速PDCAを回すという商品開発の発想に近いかもしれません。

 ただ、一つだけ注意すべきことは、「デッドエンド」を間違いなく設定することです。「デッドエンド」は、言い換えれば「マーケティング対象外リード」「育成対象外リード」等で、高級自動車メーカーで言う中学生のように、物理的に顧客になりえない層のことです。ここをあいまいにしていると、実際に購入し得ない層にアプローチすることになるので、獲得効率がやはり悪くなります。

 ただ、ここまでの話をすると、「細かい」という印象を抱く方も多いと思うます。また、マーケティングオートメーションツールは値段も安くはないこともあります。その場合、クライアントに上記項目を伝えても、「そこまで金をかけてこまかくやりたくない」等の反応が返ってくるかと思います。そこにおいて一つ覚えておいてほしい考え方が、「顧客にもし何もしなかったらどうなるか?を想像させる」ということです。大きな投資をする際は、左記の考え方も一つ有効ではあります。


③  顧客の「スコア付け」

 最後に、顧客のスコア付けについてお伝えします。
顧客のスコア付けとは、「この人は顧客になるかどうか?」という基準でユーザーに点数を付けることを指し、マーケティングオートメーションツールの代表的な機能になります。

  マーケティングオートメーションツールは、以下の二つのスコアリングを実施します。

  • 属性スコア:収入、職業、性別等いわゆるデモグラフィック情報
  • 行動スコア:サイトアクセス、閲覧コンテンツ等いわゆるアクチュアル情報

また、それぞれのスコアの用途は以下の通りです。

  • 属性スコア:理想的なターゲットの選定
  • 行動スコア:購買意欲の判定

 スコアリングの発想では、一般的には、属性スコアでターゲットを絞った後、行動スコアを見て、購買意欲が高まった人(瞬間)を特定し、インサイドセールスや営業にリードを引き渡し、商談につなげる、というフローで業務が行われます。そこにおいて重要なのは、二つです。

  1. 属性スコアの精度を高める
  2. 絶対値ではなく閾値を設定する

 「属性スコアの精度を高める」はよくよく考えれば当たり前のことにはなりますが、そもそもターゲットでは無ければ(購買能力がなければ)いくらアプローチしても無駄です。そういった人たちは、②で説明した、「デッドエンド」に該当します。要は、属性スコアリングの精度が低いと、本来「デッドエンド」に該当するはずだったユーザーにアプローチを書けて、結局獲得単価が上がり続ける、という現象が発生してしまう、ということです。

 「絶対値ではなく閾値を設定する」というのは、マーケティングで蓄積したリードをインサイドセールスや営業に引き渡すというフローを前提にしています。スコアリングの本来の目的は、「日々蓄積される人間ではフォローしきれない膨大なリードに優先順位をつけ、今誰にアプローチすべきか?を明確にすること」であるため、「このスコアを超えた人は営業に引き渡しても購入の確立が高いから問題ない」という「閾値」の設定が重要になってくるわけです。

 また、マーケティングオートメーションツールでは、「リードフォローのタイミング」と「アプローチ方法」、「アプローチ内容」の事前設定・自動アプローチが可能になっているため、その機能をうまく活用したいところです。


 「ザ・モデル」基本的には、マーケティングオートメーションツールをベースにした、顧客へのアプローチの考え方ですが、それを組織としてどう実現していくか、マーケティング担当は現場でどう対応していくべきか、等より実践的な内容も書かれているので、是非読んでみてください。

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