子どもの非認知能力は遊びで育つ!5つのポイントを意識しよう【今日から実践】

モンテッソーリ

 

    • 子どもを遊ばせると非認知能力が伸びるの?
    • 子どもの遊びで非認知能力を鍛えるためのポイントは?
    • 非認知能力を伸ばすことができる具体的な遊びが沢山載っている本はある?

本記事ではこのような疑問に答えます。

記事を書いている僕は、非認知能力に関する教育サービスの開発(3年)や、中高生の非認知能力を伸ばすキャリア・お金の教育(プロボノ)などをしています。

 

遊び込む経験が、子供の非認知能力を伸ばす

今、教育業界で注目されている「非認知能力」。

非認知能力は、経済学者のジェームズ・ヘックマンの研究などで有名になった概念で、「数値化することは難しいが、生きていく上で必要な能力の”総称”」です。

例えば、「メタ認知能力」「自己肯定感」「コミュニケーション能力」などが非認知能力に分類されます。

そんな非認知能力ですが、特に幼少期は遊びで鍛えることが可能です。

ベネッセが年長児約2,000人を対象に行った調査では、「遊び込む経験」が多い子どもの「学びに向かう力」が強いことが明らかになっています。
*「園での経験と幼児の成長に関する調査」(ベネッセ教育総合研究所 2016)

「遊び込む経験」とは、下記のような「熱意をベースに子どもが主体的に遊びに入り込む経験」を指します。

  • 遊びに自分なりの工夫を加える
  • 挑戦的な活動に取り組む
  • 自由に好きな遊びをする
  • 先生に頼らず制作する
    (ベネッセ教育研究所)

そんな「遊び込む経験」が多かった子どもを詳しく分析すると、幼児期の学びとして大切な5つの要素に関連する「学びに向かう力」が高かったそう。

この「学びに向かう力」が非認知能力に該当します。

 「学びに向かう力」に関連する5つの力

  • 好奇心
  • 協調性
  • 自己統制
  • 自己主張
  • がんばる力

詳しくは、ベネッセさんがまとめているレポートがあるのでそちらをご覧ください。

「園での経験と幼児の成長に関する調査」(ベネッセ教育総合研究所 2016)

 

非認知能力を鍛える遊びの5ポイント

続いて、「遊び」を「非認知能力を伸ばす遊び」に昇華させる5つのポイントを紹介します。

どれも簡単で、今日から実践可能です。

先に結論ですが、この5ポイントを意識しましょう。

  1. 熱意をベースに、子どもの自己選択を促す
  2. 子どもが遊びに集中できる「環境」を用意
  3. お手本は8倍ゆっくり、かつ言葉と動作は別
  4. 4つのポイントを意識して褒める
  5. 何もしない時間」を奪わない

 

① 熱意をベースに、子どもの自己選択を促す

最初のポイントは、「熱意をベースに、子どもの自己選択を促す」というもの。

『「非認知能力」の育て方』の著者であるボーク重子さんは、「熱意を感じることをさせてあげるだけで非認知能力は自然に育つ」と主張しています。

例えば、非認知能力の一つである「レジリエンス」を考えてみましょう。

レジリエンスは心の強さ・回復力などと言われ、失敗や挫折をした時にそこから立ち直る力を指します。

そしてレジリエンスを鍛えるには、「失敗や挫折から立ち直る経験の繰り返し」が必要です。

ボークさんによると、子どもがその遊びに熱意を感じていれば自然とその挫折を乗り越えるそう。

その繰り返しでレジリエンスが鍛えられます。

*レジリエンスについてはこちらの記事で詳しく解説しています
レジリエンスの高い子どもに育てる4つの方法。心の回復力を育てよう!

大人がすべきは、子どもが熱意を感じる遊びが見つかるまで選択肢を提示すること。

そして、子どもが熱中している遊びに非認知能力が伸びる要素をさりげなく追加してあげること。

子どもに選択肢を提示し自己選択を促すことは、やり抜く力(GRIT)を鍛える上でもおすすめです。

『GRIT』の著者であるアンジェラ・リー・ダックワース教授(ペンシルベニア大学)は、自己選択の繰り返しが、GRITを伸ばすために必要な「自分で決められる感覚」の獲得につながると主張しています。

  • 子どもに自己選択を促す例
    ×  「今日はサッカーをして遊ぼう!」
    ◯  「今日はサッカーと野球とテニス、何して遊ぼうか?」

  • 子どもの熱意をベースにして非認知能力を伸ばす例
    ×  「うちの子にモンテッソーリをやらせたい!」
    ◯  「うちの子が好きなパズルにモンテッソーリの要素を組み込もう!」

 

② 子どもが遊びに集中できる「環境」を用意

2つ目のポイントは、子供が遊びに集中できる「環境」について。

この「環境」というのはモンテッソーリ教育の概念で、子供が熱意を示した物事に集中できる状態こそが最適な環境だと考えられています。

要するに、子どもが「やりたい!」と思ったことにスムーズに取り掛かれる状態を用意する必要があるのです。

一言に環境といっても、
・子供が使うもの
・周囲にある危険物
・大人の介入
など指し示す範囲は広いです。

抽象的でイメージしにくいと思いますので、『非認知能力を伸ばすおうちモンテッソーリ77のメニュー』で挙げられている、「子どもにとって最適な環境」を紹介しておきます。

  • 遊ぶ対象の選択肢を多くしすぎない
  • 子どもの目線の高さに合わせておもちゃなどを置く
  • 家の中でも十分なスペースを確保する
  • 道ではなく公園、など安全に配慮した場所で遊ばせる
  • 「○○の作業なら机」など、決まった遊び場を用意
  • 遊び道具を決まった場所に配置する
  • 遊び道具はガラス、陶器などなるべく本物の素材を用意
  • 遊び道具を子どものサイズに合わせる

 

③ お手本は8倍ゆっくり、かつ言葉と動作は別

3つ目は、お手本についてのアドバイスです。

子どもが初めて取り組む遊びの場合、大人がお手本を見せることは多いですよね?

そんなお手本には、大きく分けて3つのポイントがあります。

1, お手本は、8倍スローダウン

まずは、お手本のスピードについて。

日本のモンテッソーリ教育の第一人者である相良敦子先生によると、子どもにお手本を示すときは”8倍”スローダウンする必要があるそう。

なぜ8倍もスローダウンするかというと、大人と子どもの体感速度、物事の処理速度が異なるからです。

大人の普段の動きは、子どもにとっては速すぎるのです。

普段10秒かけて見せているお手本は、80秒にスローダウンして示してあげましょう。

モンテッソーリ 子どもが変わる8倍スローの手本

 

2, お手本は、言葉と動作を分ける

あなたは、子どもにどのようにお手本を見せていますか?

親御さんからよく聞くのは「言葉と動作を一緒に伝えるお手本」です。

「こうやるんだよ」という言葉と実際の動きを分けずに同時に子どもに示すパターンですね。

実は、そんな言葉と動作を一緒に伝えるお手本はNG

なぜなら、子どもは複数の感覚器官を同時に使って情報を処理できないからです。

大人である僕達は、普段何気なく複数の感覚を同時に使っています。

リビングにいるパートナーと会話をしながら料理をし、さらに同時にスピーカーから音楽を聴く、などです。

子どもはそのような複雑な処理がまだ苦手(『非認知能力を伸ばすモンテッソーリ77のメニュー』)

だからこそ、お手本を見せる際は言葉と動作を別にしましょう。

例えば「絵合わせカード(1つの絵が2枚のカードに分かれているカード)」で遊ぶ場合は、このような流れになります。

  1. 言葉】子どもに、「見ていてね」と声をかける
  2. 動作】りんごの絵合わせカードを探して、組み合わせる
  3. 言葉】子どもに、「こんな風に2枚のカードを組み合わせてね」と伝える

実際はもっと細かいですが、イメージが鮮明になりましたか?

言葉と動作は別、です。

 

お手本は、言葉よりも動作を優先

「言葉で伝える」「動作を見せる」、どっちを優先したらいいんだろう?
そんな疑問を持たれた方もいらっしゃるかと思います。

その答えは、動作です。

『モンテッソーリ教育が教えてくれた「信じる」子育て』では、モンテッソーリ流のお手本の見せ方を詳しく解説してくれています。

上記の書籍によると、モンテッソーリでは「よく見て”体得”していく」プロセスを重視しているそう。

モンテッソーリでは基本的に言葉で教えず、初めに子どもに対して「見ていてね」と声掛けをして、大人がゆっくりとやり方を見せていきます。

言葉よりも動作を重視することで、子供の
・観察する力
・真似をする力
・真似をした上で自分なりに工夫をする力
を磨いていくのです。

先述したように、動作と言葉は分けて伝えることは前提ですが、なるべく「見て学んでもらう」ようにしましょう。

お手本に関するポイント3つをまとめておきます。

  • お手本の動作は8倍スロー
  • 動作と言葉は別で伝える
  • 言葉よりも動作を優先し、「観察と体得」をしてもらう

 

④ 4つのポイントを意識して褒める

先述した3ポイントを実践すると、子どもが大人の真似をして何かを成功させる確率が上がるでしょう。

4つ目のポイントは、そんな時に意識したい「褒め方」に関するものです。

具体的に、子どもを褒める際に意識したいポイントは下記の通り。

  • 何を褒めるか?
    結果・才能ではなく、努力・継続・工夫・失敗などの過程を褒める

  • いつ褒めるか?
    次の日などではなく、その場ですぐ褒める

  • どんな言葉で褒めるか?
    「すごいね」など抽象的な表現ではなく、具体的に褒める

  • 何と比較して褒めるか?
    他人ではなく、過去のその子自身と比較して伸びた分を褒める

特に重視したいのは、結果ではなく過程を褒めること。

結果を褒め続けると挑戦を恐れる性格になり、過程を褒め続けると自分の能力以上のことに恐れず挑戦する性格に育っていきます

その事を証明したのが、心理学者のC.ミューラーとC.デュエック。

ミューラーとデュエックは子どもに簡単なテストを受けさせ、結果に関わらず全ての子どもに「あなたは80点だった」と伝えました。

つまり、この研究では最初のテストの結果はどうでも良かったのです。

そして、子どもを下記3つのグループに分けました。

  • A:能力を褒めるグループ -「80点取れたなんて頭が良いね!」
  • B:何も褒めないグループ
  • C:努力を褒めるグループ – 「80点も取れたね!よく頑張っていたもんね!」

「A:能力を褒める」「B:何も褒めない」「C:努力を褒める」とそれぞれのフィードバックを行った後、子どもたちに2回目のテストの存在を知らせました。

その次のステップが実験のポイントで、2回目のテストは以下2つから自由に選べるようにしたのです。

  • α:1回目と同じくらいの難易度のテスト
  • β:1回目よりも難易度が高いテスト

結果はどうだったのでしょうか?

面白いことに、「能力を褒めたグループ」は35%しか難しいテストを選ばなかったのに対して、「努力を褒めたグループ」は90%も難しいテストに挑戦したのです。

能力や才能を褒められると、子どもは「同じような結果」を再現しようとします。

そうすると、徐々に「前回よりも悪い結果」を出すことを恐れるようになり、現時点の能力で良い結果を出せる課題にしか取り組まないようになります。

一方で努力・継続・工夫などの過程を褒められると、その過程や挑戦自体を再現しようとするため、どんどん工夫や挑戦を重ねていくのです。

 

⑤ 「何もしない時間」を奪わない

最後は、「何もしない時間」の重要性について。

有益な習い事、遊び、勉強など、今では育児・子育てについて「こうしたら良い」というアドバイスがネットに溢れていますよね。

ただし、そういった「有益な時間」で子どもの1日のスケジュールを埋めずに、「何もしない時間」を必ず設けてあげてください

なぜなら、何もしない時間はこそが脳内の思考を整理し、新しいひらめきや熱意を生むからです。

少し難しい話になりますが、脳にはデフォルト・モード・ネットワークという回路が存在します。

このデフォルト・モード・ネットワークが活発になると、脳内に散らばっている経験や記憶を集めて繋ぎ合わせ、思わぬひらめきや新しいことに対する熱意を生む、という研究報告が近年されています。

では、そんなデフォルト・モード・ネットワークはいつ活性化するのでしょうか?

それこそが、何もせずにぼーっとしている瞬間です。

子どもがぼーっとしている時、周りからは何もしていないように見えますが、デフォルト・モード・ネットワークが必死に脳内の情報をかき集めてつないでいるのです(『子育てベスト100 —「最先端の新常識×子どもに一番大切なこと」が1冊で丸分かり』より)

習い事や遊びなどでスケジュールをパンパンにせず、子どもを自由にしてあげましょう。

 

さて、ここまでの5ポイントをご理解いただけた方は、「実際どんな遊びがおすすめなの?」と思われるかもしれません。

そんな方向けに非認知能力を鍛える遊びをまとめた記事を書いたので、ぜひ読んでみてください。

非認知能力を鍛える6つの遊び!今日から親子で実践できる方法を紹介
「生きていく上で必要な社会的スキルの総称」である「非認知能力」。ジェームズヘックマンの研究などで注目が集まっていますよね。本記事では、そんな非認知能力を鍛える遊びを6つ紹介します。難しい方法はなく、今日から親子で実践可能です。

 

「子どもの非認知能力を鍛える遊び」についての本4冊

ここまで読んでいただいた方の中には、「子どもの非認知能力を鍛える遊びについてもっと知りたい」と思う方も多いと思います。

そんな方に向けて、記事内で触れたものも含めておすすめの本を4冊紹介します。

 

『非認知能力を育てるモンテッソーリ77のメニュー』

1冊目は、『非認知能力を育てるモンテッソーリ77のメニュー』。

こちらは、近年注目を集めているモンテッソーリ教育と非認知能力の関係性、そして具体的な方法が書かれた一冊です。

それぞれ別で語られることが多い、モンテッソーリ教育と非認知能力。

そんな両者をつなげて語っている点が本書の最大の特徴です。

また、抽象的な話だけではなく、そんなモンテッソーリメソッドに乗っ取り非認知能力を鍛える遊びがなんと77個(!)も紹介されているので、遊びのレパートリーが尽きることがないのも嬉しいポイントですね。

 

『非認知能力を育てる あそびのレシピ』

2冊目はタイトルの通り、非認知能力を育てる様々な遊びが紹介されている書籍です。

2部構成になっており、1部は非認知能力についての説明なので「そこはもう知っているよ」という方は2部から読むことをおすすめします。

2部では、「からだを動かしてあそぼう」「自然とあそぼう」「大人と一緒のあそび」など非認知能力を鍛える具体的な遊びが紹介されています。

本記事のテーマである、「非認知能力は遊びで鍛えられる」ということをよく理解できる一冊です。

 

『いまの科学で「絶対にいい!」と断言できる最高の子育てベスト55 IQが上がり、心と体が強くなるすごい方法』

3冊目は、これまでの2冊に比べてエビデンスを重視した一冊

「語りかけ」「生活習慣」「しつけ」などのテーマについて「何が正解なんだろう、、?」と悩んだ親御さんは多いのではないでしょうか?

本書は、そんな悩みに対して科学的根拠をもとに回答してくれているので参考になること間違いなし。

もちろん、本記事のテーマである「遊び」について紹介されています。

 

【3歳~6歳】非認知能力が育つ!親子のあそび図鑑

「今日、子どもと何して遊ぼう?」と悩んだことはありますか?

最後は、そんな悩みが吹き飛ぶ一冊です。

本書は、年齢ごとのシリーズものとなっており、各年齢ごとにおすすめの遊びが100以上紹介されています

まさに、「遊びの教科書」と呼べるものですね。

それぞれの遊びでどんな非認知能力が伸びるかも書かれているため、伸ばしたい能力に応じて遊びを変えるのも良いでしょう。

 

まとめ | 幼少期の非認知能力は遊びで鍛えよう!

いかがでしたでしょうか?

・子どもの非認知能力を伸ばすために遊びが重要であること
・子どもと遊ぶ、子どもを遊ばせる時の5つのポイント
・非認知能力を伸ばす遊びについて書かれた4冊の本
についてご理解いただけたでしょうか?

特に年齢が幼ければ幼いほど、子どもの非認知能力は遊びで伸ばすことができます。

ただし、闇雲に遊ばせるよりも本記事で紹介したポイントを理解した上で子どもを遊ばせた方が、より効率的に非認知能力を伸ばすことが可能です。

大切なポイントを押さえた上で、お子さんを沢山遊ばせてあげてください!

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