前回に引き続き、本記事でも、『直観と論理をつなぐ思考法』について紹介していきます!
本記事ではより具体的な、デザイン思考の方法論に踏み込んでいきます!
④ 2つの思考アプローチとビジョン・ドリブンのモットー
⑤どうやって余白を作るか、という話
⑥知覚を磨く、「センスメイキング」という方法
本書ではによると、人の思考アプローチを2つに分類しています。
これは、既に顕在している課題に対して、それを解決していくような思考法。
現前する課題(イシュー)を思考のスタート地点に置いています。
まだ目に見えていない理想状態を自発的に生み出し、その理想状態と現状の間にあるギャップから、思考の駆動力を得ていく思考法。
こちらは、内発的な妄想(ビジョン)を思考のスタート地点に置きます。
上記の内、イシュー・ドリブン思考は、既に顕在化している課題はもちろん、隠されている問題を発見し、それらを潰すことで、着実に進むことができる発想です。
ただ、イシュー・ドリブンな思考法にもマイナス面はあります。
それは、「達成できそうな目標」以外に挑戦しなくなることです。
イシュー・ドリブンアプローチでは、解決への道筋が見えている課題ばかりに取り組む傾向があ利、その結果イノベーションやクリエイティビティが失われていってしまいます。
それに対して、ビジョン・ドリブンが描く理想状態は、「ムーンショット」と呼ばれています。
「ムーン・ショット」とは実現可能性を度外視した妄想のことです。
一度極限の理想を描いてから創造的緊張を得るアプローチです。
例えば、「人類が月に行く」という「ムーンショット」の元となった目標がその代表例でしょう。
言い換えると、ビジョン・ドリブンでは、「10%のカイゼンよりも、10倍成長することを考える」ことを主とします。
それは、10%カイゼンに必要なのは「努力」ですが、10倍成長を実現する為には現在の方法とは違う「革新的なアイデア」だからです。
10倍成長を目指すことで、自分だけで達成するのではなく、世の中のあらゆる資源を活用しよう、という発想になります。
イシュー・ドリブンアプローチであれば、ひとたび問題を発見してしまえば、やるべきことは見えてきます。
ただビジョン・ドリブンアプローチでは、その起点となる「妄想(ビジョン)」が勝手に姿を現すことはありません。
だからこそ、僕達は妄想を引き出す習慣を「人工的に」デザインしていく必要があります。
その基本は、「紙×手書き」です。
ビジョン思考は右脳モードと左脳モードを行き来するものであるため、絵や文字を手書きする紙ノートはまさにぴったりなツールなのです。
以下に、「紙×手書き」を活用したデザイン思考習慣化の手法をご紹介します。
また、その際のルールと記述内容の前提を記載しておきます。
自分がいやだと思ったこと、嬉しかったこと、どうにも気になっていること等をありのままに書いていく方法です。
誰に見せるわけでもないため、本当はつらかったのに我慢していたこと、実は後悔していること、心の奥底にためている他人への悪口や嫉妬心などを隠す必要はありません。
ただ、ジャーナルの最後は必ずポジティブな内容で締めくくると毎日のやる気が出ます。
質問文は、それに対する回答を期待した「余白」です。
質問を自分に対して投げかけるということは、答えるための余白をデザインしているということなのです。
また、この妄想クエスチョンで大切なコトは、「手で考える」ことです。
質問を手書きしたらその下に、「・(ビュレット)」を3つ書いてみてください。
そうすることで質問で作った余白に3つの答えを埋めるというデザインができます。
ポイントとして、ビジョン思考における問いかけは、「どうすれば~できるか?」という具体的な問題を起点にするのではなく、「もしも~だったらどうなるか?」という形を取りますことを覚えておきましょう。
僕たちの多くは、テクノロジーの発展で世界をとてもよく見通せるようになったと考えていますが、本書ではその考えを否定しています。
確かにテクノロジーのおかげで沢山の情報にアクセスできるようになりました。
しかし、複雑で雑多な情報すべてにアクセスすることは物理的に不可能です。
それゆえに、僕たちに届く情報は個人に「最適化」されています。
こうなると、僕たちの手元に届くのは、無数にある情報の内の「断片」でしかないのです。
上記の事象は「思考や発想の無個性化」という問題を引き起こします。
「個人に最適化された情報」に触れれば触れるほど、個人の頭の中は、「ほかの個人」と同一化していきます。人と同じようにしか考えられなくなるのです。
そういった現代においては、「知覚」に注目すべきだ、というのが筆者の主張です。
そもそも人間は価値を理解しているモノやコトの範囲でしか知覚することができません。
言わば知覚できる範囲とはその人の理解力そのものなのです。
ここで登場する考え方が「センス・メイキング理論」です。
「センス・メイキング理論」とは、外界の状況を「感じ取り(Sense)」、その中から固有の「意味(Sense)」を作りだす行動モデルです。
「センス・メインキング」のプロセスは大きく分けて3つに分解されます。
②解釈 – インプットを自分なりのフレームにまとめる
③意味付け – まとめ上げた考えに意味を加える
また、本書の中では、上記3つの能力を磨く方法も書かれています。
普段僕たちが文字に触れる時には、言語脳が前面に出ています。
ただ、これがふとした時にイメージ脳に切り替わる時があります。
その状態では、文字が意味を失い、不思議な線の集まりに見えてくるそうです。
これが、「ありのまま」に見ている状態です。
とはいえ、そんな偶然を持っていても仕方ありません。
本書では、イメージ脳に切り替える具体的な手法が紹介されています。
具体的には「ペットボトルスケッチ」「逆さまスケッチ」「カラーハント」等です。
こちらは本記事では取り上げないので、よかったら本書を読んでみてください。
五感を通して得た情報を、自分なりの視点で解釈するのがこの段階です。
これを磨くには、「自分の頭の中をありのままにアウトプットして考えること」が必要です。
ただし、その際のアウトプットは箇条書きのメモやスライドではなく、「絵で考えて、絵で描きだす」手法が有効です。
要は、「落書き」をすればいいのです。
曖昧であっても、まとまりがなく断片的であってもとりあえずは図・絵の形で自分の外部に表出しましょう。
なぜ、言葉ではなく絵かと言うと、いきなり言葉にしてしまうと、思考はそれ以上先に進まなくなってしまうからです。
大切なことは、自分の中でもやもやしている情報をもやもやとした視覚情報にそのまま落とし込むことなのです。
イメージ脳をフル活用する具体的な手法としては、「ビジョン・スケッチ」「1単語・1イラストの視覚化トレーニング」などがあります。
「解釈」の段階では、「絵」として自分の脳にあることを外部化しますが、個人のイメージでとらえている世界を他人と共有する段階では、「言語化」が欠かせません。
その際に、「画像」と「言葉」を往復する思考法が有効です。
欧米のデザインファームでは、膨大な量のトレンド写真を収集し、壁に貼り付けてタグ付けを行いながら新たなイノベーションの種を洗い出す手法が一般的に行われているそうです。
この、「画像(視覚)」と「言葉」の組み合わせは非常に重要です。
視覚的な情報は、思考を「発散」させるうえでは非常に有効なやり方ですが、議論を「収集」させていくときには、言語情報へと圧縮する手続きが必要になります。
重要なことは
✅まずは視覚だけからスタートすること
✅言語と視覚を往復すること
です。
必ず、写真の情報を先行させましょう。
その段階では、言語の要素は極力取り除くべきです。
しかし、その際の情報を必ずポストイットにメモ、キーワードを書いたりして、視覚情報に「境界線」を入れていきます。そうして整理が進んできたら、再び視覚モードに戻り、新たな気づきがないか検証してみましょう。
具体的な手法としては、「クラウドハント」「ムードボード」等があります。
ここでご紹介した3つの能力を伸ばしていきつつ、「言語」「視覚」を行き来させましょう。そうすれば普段の仕事や生活、自分のビジョンを磨く際などに必ず役に立つはずです。
『直観と論理を繋ぐ思考法』の2回目では、ビジョンドリブンのモットー、余白デザインの手法、センスメイキングの手法を紹介しました。
1回目の内容よりも、より具体的な話に入れたかと思います。
第3回目にして、本書の紹介のラストになる次回は、デザイン思考の中で重要視させるプロトタイピングのポイント等をご紹介します。
コメント
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