「データ・ドリブンマーケティング」。
最近よく耳にする言葉ですね。データを駆動力にしている分、大きな外れはないが大きな当たりもない領域です。
ただし、大きなビジョンをつくったり、イノベーションを起こしたりする時にはその発想だけでは不十分なことがあります。
そこで必要になってくるものが、自分の「ビジョン」を駆動力にする「ビジョンドリブン」な思考です。
今回はそんな「ビジョンドリブン」思考の重要性と手法が書かれた『直観と論理を繋ぐ思考法』をご紹介します。
なお、本書は、学びが非常に多かった為、複数回に分けてご紹介します。
① デザイン思考のシンプルな本質
② ビジョンドリブン山のふもとにたどり着く4つの部屋
③ 自分モードの思考法を取り戻す
デザイン思考とは、「デザイナーが一定の制作物を生み出すときに行っている思考プロセス」を指しますが、その本質は以下の3つです。
手を動かして考える
2,両脳思考
五感を活用して考える
3,人間中心共創
生活者の課題をみんなで解決する
新しい家を建てるなら設計図が必要ですが、新しい家を「発想する」だけなら設計図は後回しでも問題ないと思いませんか?
何が言いたいかと言うと、重要なことはつべこべ考えるよりも、まずは手を動かす・手書きする中でアウトプットに修正を加えていく」ことだ、と言うことです。
「頭よりも先に手で考える」ということですね。
これは、デザイン思考の「Built to Think(考えるためにつくる)」という考えにのっとったものです。
さらに本書では、その考え方が学習モデルに落とし込まれた「構築主義(Constructionism)」というものが紹介されています。
構築主義の核心は、「緻密な計画に先立って、まず不完全なアウトプットを行い、それを起点に対話・内省を促していくこと」にあり、そういった試作品を作っていく行為を「プロトタイピング」と呼んでいます。
デザイン思考の本質は、直観と論理とを自在に行き来する「往復運動」にあります。
その為、まずは手を動かしながら考えた後に(プロトタイピング)、「言葉」に落とし込む作業が必須です。
例えば、その具体物に「名前」を付けるというやり方です。
上記の作業をする際にヒントになるのが「VAKモデル」という考え方です。
「VAK」とは、
・Visual(視覚の)
・Auditory(聴覚の)
・Kinesthetic(体感覚の)
のイニシャルを取ったものです。
人は五感を通して知覚を行っていますが、人によってどの感覚を重視しているかは異なり、大きくは前述の3つに分類されるのだ、というモデルです。
さらに本書では、「VAKモデル」の活用法を紹介しています。
具体的には、プロトタイピングによって具体物をアウトプットしたら、それをVAKの観点から言語化する、というものです。
また、「世の中に新しいモノを生み出す」為には
・世の中の”あたりまえ”に違和感を抱く
・とにかく気になる
という「直観的な体感覚(Kinestheticモード)」がスタートになるそうです。
その後、自分なりのアイデアを具体的なイメージとして視覚(Visualモード)に移り、最後にそこに名前をつける聴覚(Auditoryモード)で考えることが有効だとされています。
プロトタイピングから始まるデザイン思考では、第三者に思考内容が可視化されることがメリットです。
要は、人から箇条書きのメモを渡されても何が何だがわからないけれど、プロトタイプが目の前にあればそこに対話の場が生まれる、ということです。
「人の役に立つことばかり考えていると、いつの間にか自分がなくなっていく」。
この強烈なメッセージから本パートを始めます。
これは本書の中で述べられている考えで、「人の為に!人に役立つことを!」と気張って生き続けていると
・本当に自分がやりたいこととは何か?
・自分がやりたいことを実現するにはどうしたらいいのか…?
と言う本質的な部分が分からなくなっていくということです。
筆者は、そんな状態の時に行きつくものとして、「ビジョンのアトリエ」を挙げています。
「ビジョンのアトリエ」とは
・妄想の部屋
・知覚の部屋
・組み換えの部屋
・表現の部屋
の4つの部屋から構成されるアトリエで、人々が人生の険しい山を登っていく為に必要な過程を表した概念です。
これは、ビジョンを明確にしていく流れを部屋に喩えたものですね。
その一つ一つの部屋を紹介していきます。
「妄想の部屋」は、普段は蓋をしている自分の自信の内面や潜在意識と向き合い、「本当の関心」と出会うための場所です。
ただし、その関心はまだ明確な形を持っている必要はないです。
あくまで「妄想」レベルで構わないのです。
「妄想の部屋」フェーズで大切なことは、自分の持つ欲望や好きなコト、わくわくすることに向き合うことです。
上記のような、妄想を引き出す作業は、楽しそうに思えるけれど、内省の習慣がないと戸惑うことが多いそうです。
その為、手を動かしながら妄想を形にしてみて、まずは自分の気持ちと向き合うことが必要です。
そして、次の部屋に繋がる扉は、自分の妄想を「もしも…だったら?」という魔法の問いかけに落とし込むことが開くそうです。
「知覚の部屋」は、妄想の解像度を上げるための部屋です。
この部屋では、「妄想の部屋」で書き出した自分の思い(文字でも絵でもOK)をベースにします。
その思いを、手で動かしながら、自分がピンとくる設計図や世界観のコラージュを作っていきます。
手を動かすことで五感を刺激し、ぼんやりしていた妄想の輪郭をはっきりさせるのです。
そして、自分の未来の可能性であふれた構想を一枚の絵にしていきます。
「妄想の部屋」で広げたことをベースに、奥の方から取り出してきた自分の欲望や好きなことを構想に仕上げていく段階、と捉えていただければ問題です。
「組替の部屋」は、解像度を上げてアイデアらしくなってきた構想の「独自性」を徹底的に突き詰めていく部屋です。
ここでは、自分の常識の偏りに気づいたり、構想を細かいパーツに分けたりします。
そうしてもう一度新しい組み合わせを考える中で、キービジュアルやネーミング等の精度を高めていきます。
これは、「ディスラプション」という創造的破壊の手法に近いです。
最後の部屋は、アイデアとして組み替えた自分の妄想を、具体的な作品にして人に見せる「表現の部屋」です。
ここでいう、具体的な作品、とは前パートで紹介した、「プロトタイプ」のことを指します。
重要なのは、自分のビジョンを作品にして、小規模グループで批評し合い、そこで得た感想・フィードバックを活用し、モチベーションを高めたり、次なる妄想の種をつくったりすることです。
ここまでビジョンを具体的にする4つのステップについて説明しました。
ただ、4つの部屋をめぐる流れは一周では終わらないことが大半です。
このサイクルでは、妄想から表現までのプロセスをどれだけ楽しみ、それだけ夢中になれるかが最も重要です。
自分モードの思考法を取り戻す戻すとはどう言うことでしょうか?
結論から申し上げると、それはここまで説明したビジョンドリブン思考を身に着ける、と言うことです。
ただし、「ビジョン・ドリブン思考」にはうまくいかないパターンがあります。
それを最後に説明します。
僕たちは数多の「やりなければならないこと」を抱えています。
ただ考えてみて欲しいのですが、逆に「やりたくてやっていること」はどれくらいあるでしょうか?
この質問にスパッと明確に答えら得ますでしょうか?
何が「やりたいこと」で何が「やりたくないこと」なのか、「なぜ」自分がそれをやっているのかわからない人では、「自分モード」で考えることは難しいです。
なぜなら、「自分」をわかっていないのですから。
普段僕たちがが受け取っているのは、「自分用にカスタマイズされた情報」です。
その、「自分用にカスタマイズされた情報」に触れれば触れるほど、僕達の頭の中は、「他の誰か」と同化していくのです。
「いいね!」があふれる世界では、他人から称賛を得やすいモノばかり投稿され、似たような投稿があふれることになります。
シェア・リツイートが簡単にできてしまう世の中だからこそ、インプットした情報にどのような加工を施すのかについて独自性ある意見を磨きましょう。
学んだことを外だしする機会がないと、「その人なりの視点」は生まれません。
そう言った人には、学びを他人に伝えたり、展示・発表したりする場が必要です。
ここまで「なぜ自分モードの思考ができないか」について説明しました。
ここからは「自分モードのビジョン思考を身に着けるためにはどうすればいいか」という未来の話をします。
結論、「ビジョン思考の習慣化」が必要で、その為には「余白作り」が欠かせません。
余白は「人為的」に作る必要があります。
なぜかと言うと、「ビジョン思考」には時間がかかりますが、現代人に時間的余白がないからです。
だから、「人為的」に余白を作るのです。
イノベーターとして成功するのであれば、余白がなければビジョン思考は機能しないことをまずは理解すべきです。
ビジョン思考をしていく上では、
・誰でも実践できる方法に落とし込まれていること
・それらのメソッドが1つのサイクルの中に配置されていること
が重要です。
具体的には、前述した「VAK」の要素をバランスよくより入れること、などが重要でしょう。さらに具体的な方法については、次回以降の記事でゆっくり紹介していきます。
今回の記事では、「ビジョン思考とは何か?」「ビジョン思考のプロセスはどんなものか?」「自分モード思考法を取り戻すにはどうすればいいか?」を紹介しました。
このビジョン思考の本質を紹介した上で、実際の実践方法の紹介を次回以降していきます。
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