【要約】『爆発的進化論 1%の奇跡がヒトを作った』ヒトができるまで

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 気が遠くなるほどの昔、生命は微生物から始まったことは有名です。そこからどのようにして、目・口・腕等を持つヒトが生まれたのでしょうか?

 本書は、それは「たった1%の奇跡だった」と語っています。

『爆発的進化論 1%の奇跡がヒトを作った』からの3つの学び
①  「骨」の進化
②  「脳」の進化
③ 「性」の役割

①  「骨」の進化

 動物が最初に作った骨格は、「流体骨格」と言われています。「流体骨格」とは、ボールに水をパンパンにいれると固くなるように、硬さが変化する骨格のことを指します。初期の生物が、海に生息しており、おそらく体が小さく長細い生き物でした。海底を這いまわったり、穴を掘って海底に潜ったりしていたとされています。その、穴を掘るためには、より硬いモノが必要です。そのような必要に迫られて、「流体骨格」が生まれたと考えられています。

 さらに生物は、カンブリア爆発によって、より硬い骨格を手に入れました。その要因は、「動物を食べる動物が現れたこと」です。動物を食べる動物が現れたら、食べられる側の動物も食べられないように対抗する必要があります。そのように、動物の多様化や大型化が進んだと考えられています。また、進化をしていく中でも、骨格を作る遺伝子は進化速度が非常に速いといわれており、それ故に、骨格の進化は生物たちにとって急務で進んだことだったのでしょう。


②  「脳」の進化

最古の人類はサヘラントロプス・チャデンシスといわれており、今から700万年前に生息されていたとされています(ヒトとチンパンジーが分かれる前の種と考えられています)。そして、サヘラントロプス・チャデンシスはおそらく二足歩行としていたといわれています。要は、700年前から私たちは二足歩行をしているのです(サヘラントロプス・チャデンシスから私たちホモ・サピエンスの間には、数え方にもよりますが25種類の人類がいたことが分かっています)。ということは、私たちの両手は700万年前から自由でした。

 しかし、脳が大きくなったのは、250万年前からです。それでも当時の人類(ホモ・ハビリス)の脳は600ccしかありませんでした(私たちの脳は約1,300cc)。

なぜでしょうか?それは、脳が非常に燃費の悪い器官であるためです。重さは体の2%しかないにも関わらず、体全体で使われるうちの20%のエネルギーを消費するといわれています。つまり、食べることもままならない厳しい環境で生き抜き、種を反映させていくには、脳が小さい方が都合がいいというわけです。

 ただ、脳はあることをきっかけに大きくなり始めます。それが、安定的に肉を食べられるようになったこと、です。最初の武器が見つかる時期と、人類の脳が大きくなり始める時期は重なっています。おそらく、石器によって肉が手に入りやすくなり、それ故に大きな脳を維持することができるようになったのでしょう。そして、脳が大きくなれば、さらに高度な石器を作れます。さらに、仲間との協力プレイで一狩り行くことも可能になります。そうして、ますます安定的に肉が手に入るようになり、さらに脳が増大した、と考えられています。


③ 「性」の役割

 この本の面白いところですが、「なぜ性が必要なのか?」、つまり「なぜ男は必要なのか?」を明らかにしています。なぜなら、男と女が交尾して種を反映させていくよりも、女が一人で子孫を残せる能力を持った方が明らかに効率的だからです。

 本書での結論は、「有利な形質を組み合わせた子供を作れる」、「ウイルスへの対抗」の二つです。

 「有利な形質を組み合わせた子供を作れる」という方から説明します。女性が交尾なしで子供を産めるようになった世界を考えてみましょう。仮に、数学だけが得意な女性と、英語だけが得意な女性がいて、それぞれ4人の子供を産むとしましょう。子供は全部で8人です。仮に片方が男性だった場合、男性は子供を産めない分、子供の総数は4人になります。これは種の「数的繁栄」を考えれば良いことです。ただし、生まれてくる子供の4人は数学が得意で、4人は英語が得意です。両方ともできない子供はいないけど、両方ともできる子供もいません。

 反対にオスがいる世界を想像してみましょう。数学が得意な男性と英語が得意な女性がいて、女性が4人の子供を産んだとすると、生まれてくる子供の数は、女性しかいない世界に比べて少ないです。しかし、「質的繁栄」という面で勝っています。要は、有利な形式を組み合わせた子供を作れるのです。単純に確率を考えれば、生まれてくる子供の内、1人は父からは数学の才を、母からは英語の才を受け継いだどちらも得意な子どもになります。これが、「質的繁栄」ということです。さらにその、英語も数学もできる子供が、同じく英語も数学もできる子供と大人になって子供をうめば、英語も数学もできる子供4人生まれてくるはずです。このようにして、性があることによって自然選択によって有利な形質を組み合わせた子供を増やしていくことができます。もしも性がなければ、有利な形質を持つ子供が生まれてくる方法は、「突然変異」しかありません。要は、性があって子供を作れるたびに遺伝子を混ぜ合わせる方が、素早く変化に対応できるのです。このような考え方を、「すばやい適応仮説」といいます。

 もう一つの話が、「ウイルスへの対抗」です。要は、「性」があることで、「ウイルス」が種を滅ぼすことを防ぎ、現状の生活を維持することができるのです。

 スマートホンで考えましょう。ある日、迷惑メールが届きます。一通だけと甘く見ていると、次々と届くようになって困ったあなたはメールアドレスを変更します。すると、迷惑メールは届かなくなります。しかし、それは一瞬で、しばらくたつとまた迷惑メールが大量に届くようになります。

 人類のウイルスへの防御システムとウイルスの進歩も同じ構図です。これは、普通に考えればウイルスの方が有利な戦いです。なぜなら、ウイルスの方が進化速度が早い、つまり一世代の交代が短いからです。例えば、大腸菌は早ければ20分で一世代を終えますが、ヒトが子供を産むのはせいぜい20歳から40歳くらいでしょう。ではなぜ、僕たちは生き残っているのでしょうか?それは、「性」があることにより、防御システムの性能を上げるのみならず、遺伝子自体を交配させて、遺伝子を変化させることが可能だからです。要は、男がいるからこそ、子供と親は別のメールアドレスを持つことができるのです。

 要は、「性」があることでこれ以上の悪化を防いで現状を維持することが可能になるのです。また、上記した二つの考えでは後者の方が有力で、それを「赤の女王仮説」といいます。「赤の女王仮説」とは、ルイス・キャロルの『鏡の国のアリス』のある場面から名付けられた名称です。

鏡の国のアリス(ルイス・キャロル)より.

 僕達の骨格や口、脳、さらには生命までがどのように作られているかが各機能ごとに分けられた非常にわかりやすく読みやすく、面白い一冊です。

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