【要約】『自動車工場のすべて』トヨタ生産方式の一番わかりやすい説明

BOOK

 自動車はどのように作られているのか?自動車の生産効率を大きく変えたTOYOTAのかんばん方式とは何か?なぜかんばん方式が生まれたのか?等、自動車の作られ方から、仕事術まで、自動車のすべてをカバーした一冊の要点を紹介します。

本記事の内容
①   TOYOTAのかんばん・あんどん方式
②  TOYOTA流仕事術
③  自動車工場から見た電気自動車

①   TOYOTAのかんばん・あんどん方式

 TOYOTAが自動車の生産効率を大きく変えたことは有名な話です。しかし、いざ何をどう変わったのかを正確に説明できる人は少ないのではないでしようか?本書では、「TOYOTA生産方式」について非常にわかりやすく説明されているので、そのポイントをお伝えします(実際にAmazonレビューでも好評)。

 「TOYOTA生産方式」を支えるのが、「かんばん」と「あんどん」の二つです。

 一般的に、工場での自動車生産というと、前工程から後工程に次々と完成部品を流していくイメージがあるのではないでしょうか?

 ただ、その方法には一つ問題があります。それは、「前工程での作りすぎによる後工程の在庫過多」です。具体的にいうと、後工程の作業が何かしらの理由でストップしたとしても、その情報が前工程に伝わらないため、前工程は通常通りの生産を続け、結果的に後工程がさばききれずに在庫過多に陥る、ということです。

 そこで、TOYOTAが採用したのは、以下の2STEPです。

  1. 前工程を完成させても後工程に自動的に送らせない
  2. 後工程での在庫が少なくなった時のみ、後工程から前工程に部品を取りに行く

 要は、「前工程(部品完成)→後工程(納品)」から、「後工程(在庫の現象)→前工程(取りに行く)」という形に順序を入れ替えたのです。

 上記の仕組みを可能にしたのが、「かんばん」です。「かんばん」とは、「作りすぎの無駄」をなくす為に考え出された「指示票」のことです。また、この考え方を、「ジャストインタイム」といい、必要な時に、必要なものが、必要だけある状態をつくるということです。

 上記した「かんばん」を、「工程間」「納入業者との間」でやり取りすることで、工場の生産コントロールを実現しているのがTOYOTAです。

 また、TOYOTAのもう一つの仕組み、「あんどん」も重要です。「あんどん」とは、工場内の異常検知システムです。システムといっても単純で、製造機械を、「あんどん」と呼ばれるランプに一台ずつ個別に繋ぎ、一人で複数の生産機械の管理を可能にした、というものになります。

 「あんどん」登場以前、工場内では、一つの製造機械につき一人の見張り番が必要でした。なぜなら、人目で異常を検知する必要があったからです。それに対して、「あんどん」は、異常が起きている生産機械と連動したランプが点灯することで異常を知らせてくれるため、見張り番が一人で済むようになったのです。


②  TOYOTA流仕事術

 次は、「かんばん」「あんどん」等が生まれる元の、「TOYOTA流仕事術」を見ていきましょう。

 「TOYOTA式仕事術」では、「現状の問題発見」~「効果確認」のサークルを複数回回し、問題解決に迫っていきます。具体的には、一回のサークルは以下のステップに分かれています。

  1. 問題発見:基準と実態の差を見つけ出す。問題点=基準と実態の差
  2. 目標設定:あるべき姿を想定し、必要性の高い目標をズバリと決める
  3. 要因解析:「なぜ?」を5回繰り返し、真因に迫る
  4. 対策実施:複数の真因と思われる事象に対して対策を実施する
  5. 効果確認:基準と比較して、実態がどの程度向上したかを見る

 さらに、上記したように、このサークルを2回、3回と回していきます。そして、「問題発見」の部分では、1回目のサークルで改善策を打ったにも関わらず存在している基準と実態との差を明らかにします。

*下記画像では、8STEPというさらに刻まれたSTEPで表記されています


③  自動車工場から見た電気自動車

CASE戦略に代表されるように、今まさに注目を集めている「電気自動車(EV)」。

 自動車工場視点で見ると、エンジン車との構造的な違いはごくわずかなんです。具体的な違いは以下になります。

  • エンジン車→電気自動車
    • エンジン→モーター
    • ガソリンタンク→充電器

 わずか2つの違いですが、これがユーザーに使われると大きな違いを生みます。

 まずは、「安全性」です。いざ事故になったとき、電気自動車はガソリンを積んでいないため、爆発炎上の危険は比較的小さい傾向にあります。

 また、「災害時の緊急電気」としても役立ちます。具体的には、電気自動車に蓄えられた電気量は一般家庭の2日分に相当する為、スマートグリッド化された家庭では、災害時の停電などに効果を発揮する可能性があります。

*スマートグリッドは、電力供給を合理化、最適化すると共に、クリーンなエネルギー(再生可能なエネルギー)を積極的に導入することで、従来の発電所が発生していた大量のCO2を削減して地球環境に貢献するという、国を挙げての壮大なエネルギー問題への取り組み

 反対に、航続距離の短さ、永久磁石に稀少元素が使われていること、充電の為のインフラ施設など、電気自動車が爆発的な普及をしていくための課題が残っていることも事実です。

 ゆえに、電気自動車のプロダクト自体のアップデートはやりつつ、現状は、「ビジョンに共感して買ってもらう」「電気自動車だけに先進技術を導入する」「電気自動車ならではの点を訴求する」等が賢い売り方ではないでしょうか?例えば以下のような形。

  • ビジョンに共感して買ってもらう
    • 日産の「ゼロ・エミッション」等エコな社会を目指すという方向と、Teslaのように未来のモビリティをつくるという新しさの二つの切り口があるように感じます
  • 電気自動車だけに先進技術を導入する
    • 日産のプロパイロットの導入がまさに上記に当てはまる
  • 電気自動車ならではの点を訴求する
    • 電気自動車ならでは、「加速性能」「静粛性」「燃費」等、電気自動車ならではの強みを押し出していくことは、自社のEVを売っていくというよりもEVに対する消費者の心理的ハードルを下げ、EV車全体の売り上げを上げていくために必要に感じる

 TOYOTAの自動車生産工程から、最新EV情報まで、本当に広い範囲をカバーし、一つ一つを丁寧に説明している本だと感じています。就職活動等で自動車について理解したい人、TOYOTAの仕事術を学びたい人は必読の一冊だと思います。

コメント

タイトルとURLをコピーしました