【要約】『ビジネスモデルの教科書 上級編』| 戦略の本質的理解

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「戦略」とは何か?インターネットで定義を調べてみると下記のような言葉が出てきます。

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1 戦争に勝つための総合的・長期的な計略。→戦術
2 組織などを運営していくについて、将来を見通しての方策。「経営戦略の欠陥」「戦略的人生論」「販売戦略を立てる」
[補説]具体的・実際的な「戦術」に対して、より大局的・長期的なものをいう。
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本書の序章では、1番の定義が紹介されています。
今回は、『ビジネスモデルの教科書 上級編』から、そ「戦略」とは何か?という話を紹介します。

『ビジネスモデルの教科書上級編』から学ぶ”戦略”とは何か?
・勝利のための手段である
・勝利した後の世界は魅力的か?

勝利のための手段

 もともと軍事用語だった”戦略”。「戦争に勝つための統合的、長期的な計画、方策」が本来の意味です。つまり、戦略とは、勝利の為の手段である、ということが本書の中で言われている定義です。

 「戦略とは勝利の為に手段」ということには2つのポイントがあると考えています。1つ目が、「勝利の為に」という点。私は日常業務で戦略を作っていますが、この勝利の為に、という考えが本当に大切だと考えています。なぜなら、勝利の為にということを考えると、戦う相手と戦い方、そして勝利した後の世界を想像するようになるからです。

  • 戦う相手は誰か?

 勝利の為に、というからには、もちろん「誰と勝負しているのか」という話が必要になります。2つあると感じています。1つが顧客、2つ目が競合です。

 顧客に対して勝つというのは少々違和感のある言い方かもしれませんが、この、ものがあふれた世の中においては、まずは顧客に選んでもらえる理由を作る、ファクトを作ることが必要だと考えています。

 特に広告代理店等のやり方を見ていると、ファクトを整備しないままパーセプションを変える(ex,この商品はお菓子ではなく午後3時の栄養補給剤だ!)ことでなんとかしよう、という戦略が目立ちます。はっきり言って、このやり方には限界があると思います。なぜなら、そもそもユーザーがその商材自体を欲していなければパーセプション変えるところか全く関心を持たれないからです。だから、まずは、ユーザーがその商品を選んでくれる理由を作る必要があると思います。

 そのあとに来るのが競合との闘いです。せっかく商品自体の武器を作ったはいいが、競合と武器がかぶっていたりさらには劣っていたりした場合、ユーザーは使ってくれません。少なくとも僕は使いません。だからこそ、サービスとして競合に勝てる要素を考えて実装していくことが必要になると思います。私は、この時に使える要素の一つとして、「データ」があると考えています。

 『アフターデジタル』の紹介ブログでも書きましたが、今後、「オフラインという概念がなくなり、日ごろの買い物行動等すべてがオンラインに接続された、”アフターデジタル”という世界」に代わっていきます。そこで大切なのは、「取得したデータをプロダクトとUXデザインに返して、素早くプロトタイプを作り、高速でPDCAを回す」ということです。つまり、競合に勝つために、自社データ、さらにはWEBの閲覧データ等自社に有用なデータベースを統合して、プロダクト、UX、戦略に高速で反映していくことが求められると考えています。

 

 

  • どう戦うか?

これが、ビジネスモデルの話に繋がってきます。戦略の主な構成要素は、「誰に」「何を」「どうやって」の3つです。その中の、「どうやって」が戦い方の部分で、ビジネスモデルです。

 要は、ビジネスモデルで競合と比較した際の優位性をいかに出すか、という話です。

 例えば、LCCはその成功例です。ANAやJALが大規模にビジネスを展開し、機内食等良質なサービスを展開していく中、LCCは絞る戦い方を選択しました。それが、本書で紹介されている、「クリームスキミング」「アンバンドリング」という戦略です。

 「クリームスキミング」とは、「市場の中で最も需要密度が高い部分に集中し、効率的にビジネスを進められる結果としてコストダウンが進み、それを価格に反映して競合に対して得るビジネスモデル」です。LCCの場合、需要密度の高い路線のみに参入し、飛行機の座席の稼働率を上げ、それを価格に反映して価格優位を実現、結果として集客を進めることができました。

 もう1つの、「アンバンドリング」とは、「現在提供している価値を分解して顧客が必要な価値を選択的に購入できるようにするビジネスモデル」です。LCCの場合、食事や機内エンターテイメントを航空運賃とは別に販売しています。

 

 

勝利した後の世界は魅力的か?

 本書には書かれていませんが、これは非常に大切な概念です。要は、そのサービスがローンチし、戦略が実現して、実際にユーザーが増えてきたとして、その時ユーザーは他にはないどんな素敵な体験ができるのか?社会はどのように素敵に変わっているのか?ということです。

 これは、『アフターデジタル』で紹介した、「ビジョンの主語を顧客や社会に変える」という考え方とリンクしています。

 例えば、LCCの場合はどうでしょうか?これまでよりも安く飛行機という移動手段を利用できるようになったユーザーは、これまで行けなかった海外旅行に行くことができます。つまり、LCCが登場して普及したことによって、お金持ちでない人も、海外旅行に行く、大袈裟に言えば世界を知ることが可能になってのです。これが、「その時ユーザーは他にはないどんな素敵な体験ができるのか」という話です。

 さらに、LCCが誕生し、ユーザーがこれまでよりも海外旅行に行くことが容易になった結果、こんなことが起きるかもしれません。例えば、「これまで中国を民度の低い国だと考えていた日本人が、実際に中国に行ってみた結果、データの力で素敵な社会になっている中国を目撃し、誤解が解け、さらに中国のファンになる」ということです。つまり、「実際に訪れるという体験が増えた結果、日本人の海外に対するマイナスな印象がどんどん払しょくされていくような社会・世界」です。これが、「その時社会はどのように素敵に変わっているのか?」という話です。

 

 今回は、『ビジネスモデルの教科書上級編』と前々回に紹介した、『アフターデジタル』の内容を組み合わせて紹介してみました。『アフターデジタル』、好きなんです(笑)。

 この『ビジネスモデルの教科書上級編』はビジネスモデルの構造や現在世に展開されているビジネスモデルの吸収、現状への反映の仕方等を教えてくれる、まさに、「教科書」です。この「教科書」を「価値」に変えていくのは、この本を読んだ個人次第です。本で読んだ内容は実践しなければただの豆知識である、ということを忘れずに私も読書と実践に励んでいきます。

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