僕は昔から、「根気よく何事も全力で頑張れ」と教わってきました。そのように教わってきた方は少なくないはずです。
しかし社会人になって「とにかくたくさんやってみる」姿勢には限界があると気づきました。
なぜなら、現代は限られた時間で価値を発揮することが求めらているからです。
「とにかくたくさんやってみる」の姿勢では働く時間ばかり伸びていき、バリューの低い人とみなされてしまうのです。
① ビジネスパーソンにとっての「バリュー」とは何か?
②「イシュー度」をあげる
③「解の質」 をあげる
そもそも仕事とは、「現状に対してポジティブな変化を生み出す行為」です。
例えば、これまで社会になかったサービスを生み出す、打ち合わせで上司が思いつかなかった視点から意見を出す等です。
話の規模に大小はありますが、何かしらの変化を生み出すからこそ自分の仕事や能力は認められていくのです。
そして、バリューある仕事をするためには二つのアクションが必要です。
一つ目が、変化を生まない活動に使う時間をなくすこと。
二つ目が、より効果的な変化を生むことです。
本書では、前者を「イシュー度」、後者を「解の質」と呼んでいます。
自分の置かれた局面で特定の問題に対して答えを出す必要性の高さ
「そもそもこの問いに答えるべきなのか?」を考えて「イシュー度」の高い問題にフォーカスする
(2)解の質
上記のイシューに対してどこまで明確に答えを出せているかの度合い
「この問題をどうやったら解けるだろうか?」を考えるが「解の質」向上に繋がる
そして、まずは「イシュー度」をあげることに専念すべきです。なぜなら、そもそも解決する必要性が低い問題に対して質の高い解を出したところでなんの変化も生み出さないからです。
ここまでの話を踏まえると、僕達が取るべきアプローチは下記になります。
ここからは、実際にどうやって「イシュー度」と「解の質」を上げるか、という話をします。
まずは、イシューを洗い出す為に必要なことは何か?という話をします。
イシューを洗い出す際によくある現象は、「テーマの整理(=こんな感じのことを決めないとね)」で終わってしまうことです。
このような事態を避けるためには、強引にでも具体的な仮説を立てることが重要です。その理由は下記の3つです。
1)具体的な仮説に落とし込まないと、答えを出せるレベルのイシューにならない。
Ex)
× 炭酸水の市場規模はどうなっているのか?
〇 炭酸水の市場規模は縮小しているのではないか?
2)仮説を立てることで、初めて本当に必要な情報や分析が明確になる。
3)予め具体的な仮説を立てておくことで、分析結果の解釈が明確になる
また、イシューが見えて、それに対する仮説を立てたら、次にそれらを言葉に落とす作業が必要です。なぜなら、イシューを言葉にすることで、自分は何に対して答えを出したくて、対象物をどうとらえているのかが明確になる為です。
ここで言葉にできないのであれば「最終的に何を言わんとしているのか」が明確になっていないことを意味します。
また、イシューと仮説を言葉にする際の注意点が3つ存在します。
2)「Why」ではなく、「Where」「What」「How」でイシューを規定する
-「Where」:「どちらか?」「どこを目指すべきか?」
-「What」:「何を行うべきか?」「何を避けるべきか?」
-「How」:「どう行うべきか?」「どう進めるべきか?」
3)「Aではなくて、むしろB」のように比較表現を入れる
さらに、よいイシューの条件についてもう少し詳しくお話しします。
そこに答えがでると先の検討方向に大きく影響を与える。
「誰にとってのイシューか」を明確にするための主語が含まれている必要があります。
2,深い仮説がある
検証できれば価値を生むと誰もが納得できるレベルまでに具体的。
「ここまでスタンスを取るのか」と思わせるほどの仮説を盛り込む(常識を覆すような洞察や新しい構造で世の中を説明する等)。
3,答えが出せる(=具体的な解決方法が思い浮かぶ)
今のテクノロジーではどうしようもない、などどう考えても解けない問いを設定するのはナンセンス。
また、2つ目の条件である「深い仮説がある」の中に含まれる、新しい構造で世の中を説明する際の構造として、以下の4つのパターンが挙げられます。
B)関係性の発見(ex,ポールとジョンが同じ行動、ジョンとリッチが反対の行動をしている為、ポールの行動からリッチの行動を推測可能)
C)グルーピングの発見(ex,市場セグメンテーション)
D)ルールの発見(普遍的なしくみ・数量的な関係等)
ここまで良いイシューの話をしてきましたが、ここからは具体的なイシューの特定方法を説明します。まずは、材料=情報を集める際のポイントです。
ii)基本情報のインプット&構造化
一次情報から得た感覚を持ちつつ、世の中の常識・基本的なことをある程度の塊としてダブりなくモレなく、そして素早く収集します。この情報を得ずして決め打ちすることはNGです。
(通常のビジネスで事業環境を検討する場合であれば、業界内の競争関係/新規参入者/代替品/事業の下流*顧客・買い手/事業の上流*サプライヤー・共有企業/技術・イノベーション/法制・規律)
上記の情報における抑え所は、「数字」「問題意識」「フレームワーク」です。
・「数字」:この数字を知らずに議論しても仕方ないと思えるもの
・「問題意識」:知らないとその分野の人との会話が成り立たないもの
(歴史的背景を踏まえた分野・業界・事業の常識、一般的な通念、これまでの検討の有無・内容と結果等)
・「フレームワーク」:これまで課題がどのように整理されてきたか、課題を取り巻くものがどのように位置づけられるか
iii)集めすぎない・知りすぎない
情報収集はやりすぎるとどこかで効率が悪くなります。そして、情報はありすぎると知恵が出なくなります
基本的にはここまでの情報でイシューの特定が可能なはずです。
ただしどうしても良いイシューが出てこない場合も確かにあります。
そのような状況を解決する方法の内最も簡単なものは、一度頭を休めて、もう一度ここまでやってきた作業を繰り返すことです。再度一次情報に触れ、見識のある人と議論します。
しかし、それでもイシューが特定できない場合もあると思います。本パートの最後では、そんなどうしてもイシューが見つからない場合の5つのアプローチをご紹介します。
2,視覚化する:意識すべきは、空間的な広がり・順番・動き等
3,最後に何が欲しいのかを考え、そこに対して必要な分析や情報を挙げる
4,原因ではなく、答えを出すためにSo What?を繰り返し、イシューを具体的にしていく
5,いくつかの重要な変数を極端な値に振ってみる:どの要素が鍵になっているかわかる
*5については複雑な要素が絡み合っている場合
「イシュー度」が高い問題が選べたら、次は絞り込んだ問題に対する「解の質」を上げる段階です。
ここでは「イシュー分析」が必要です。
「イシュー分析」とは、イシューの構造を明らかにして、その中に潜むサブイシューを洗い出すとともに、それに沿った分析のイメージつくりを行う過程です。
また、「イシュー分析」は、「ストーリーラインつくり」と「絵コンテつくり」で構成されています。
*本記事では、「ストーリーライン」までを対象とします。絵コンテが気になる方は『イシューからはじめよ』読んでみて下さい。
「ストーリーラインつくり」には二つの作業があります。
「イシューの分解=サブイシュー出し」と「分解したイシューに基づいたストーリーラインの組み立て」です。
そもそも、イシューとは大きな問いの為、そのものに対して一発で答えを出すのは難しいです。その為、おおもとのイシューを「答えを出せるサイズ」まで分解します。その分解されたイシューの一つ一つを「サブイシュー」と呼びます。
イシューを分解し「サブイシュー」にすることで、課題の全体像が見えやすくなり、さらにサブイシュー間の取り組む優先順位もつけることができます。
ここで一つ注意があります。イシューを分解する際には、「ダブりなくモレなく」「本質的に意味のある固まり」で分解する必要があるということです。少しわかりにくので、例を出しましょう。
例えば、「卵の成分ごとの健康への影響」をイシューとした場合、サブイシューでは、白身・黄身等の成分に分けた検討が必要になるでしょう。白身・黄身というのは、「ダブりなくモレなく」、かつイシューから見ても「本質的に意味のある固まり」です。白身と黄身それぞれの健康への影響が分かり、仮に白身の方が体に良く、黄身の方が体に悪い場合、黄身に比べて白身の方が人の健康に対してプラスの影響がある、と結論付けられるでしょう。
ただ、そんなことを言われてもどう分ければいいかわからない、という方も多くいらっしゃるでしょう。その際に役立つ型に一つが、「WHERE・WHAT・HOW」です。
・WHAT:具体的にどのような勝ちパターンを築くべきか?
・HOW:具体的な取り組みをどう実現していくか?
そして、上記の型を使ったイシューの分解が済んだら、「サブイシュー」毎にもスタンスをとって仮説を立てます。 「サブイシュー」毎に仮説を出したら、いよいよストーリーラインを組み立てましょう。
このストーリーライン作りには2つの型があります。
最終的に言いたいメッセージについて、理由や具体的なやり方を「並列」することでメッセージをサポートする。重要な要素を「ダブりなくモレなく」選ぶようにしましょう。
2,空・雨・傘
・空=課題の確認(○○が問題だ)
・雨=課題の深堀(この問題を解くには、ここを見極めなければならない)
・傘=結論(そうだとすると、こうしよう)
雨の部分で、見えてきた課題の深堀がどこまでできるかが勝負。
「この問題・壁はどうやったらクリアできるんだろうか?」ではなく、まずは、「そもそもこの問題は解く意味があるのか?≒解くことがプラスな方向に変化が起こるのか?」を考える。
この発想を持っているだけで、仕事の質は大きく変わる気がしています。
なぜなら、「こうしたい!」と強い思いを持っているひとは多いですが、そこに、「それをやったとしてどの程度プラスの変化を起こせるのか?」という視点を持っている人が少ないからです。事実、僕も仕事でこの発想を取り入れ始めてから、コミュニケーション戦略の規定等が非常にやりやすくなりましたし、悩む時間が減りました。
僕と同じように、企画書作りなど仕事の進め方等で迷ったことがある方は是非読んでみてください。
また、本記事に興味を持ってくださった方はこちらも読んでみてください。
『思考の整理学』という、「そもそも考えるって何だろう?」「いい答えってどうしたら出るんだろう?」というテーマを扱った本の要約です。
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