非認知能力は大人でも伸ばせる!プロジェクトベースドラーニングをしよう。

非認知能力

 

・大人でも非認知能力を伸ばすことは可能なの?
・なんで大人でも非認知能力を伸ばすべき?
・どうしたら大人でも非認知能力を伸ばせる?

本記事では、このような悩みや疑問を解決します。

記事を書いている僕は、非認知能力に関する教育サービスの開発を3年ほどしたり、プロボノとして中高生の非認知能力を伸ばすキャリア教育をしたりしています。

 

子供よりも伸びは鈍化するが、大人の非認知能力も伸びる

「大人でも非認知能力を伸ばせるのか?」という点についてですが、結論としてはタイトル通り、子供と比べると伸びは鈍化するけれど、大人も非認知能力を伸ばすことは可能です。

そのことを順を追って説明していきます。

 

非認知能力の簡単な説明

まず最初に「非認知能力」について確認しましょう。

「非認知能力」は、経済学者であるジェームズ・ヘックマンの研究でその重要性が確認された、「生きるための必要な能力の総称」。

一言でいうと、「数値化、指標化できないが、人生を豊かにするために必要な能力群」です。

具体的には、自己効力感、メタ認知、コミュニケーション力などが非認知能力に該当します。

*非認知能力についてはこちらの記事で詳しく解説しています

 

大人にとっても、非認知能力は大切だし伸ばすべき

さて、そんな非認知能力ですが、子供だけではなく大人にとっても重要な能力です。

先述したヘックマンの研究では、非認知能力を身に付けていた人は、そうでない人に比べて40歳時点の年収や、犯罪率などで良好な成績を残していたそう。
(ただしヘックマンの研究は厳密には幼児教育の重要性について、認知能力以外の重要性を示唆したものではあります。)

*ヘックマンの研究についてはこちらで詳しく解説しています。

非認知能力の重要性を示唆したヘックマン教授の研究【ペリー就学前プログラム】

また、非認知能力全体以外にも、非認知能力に分類される各個別スキルについても重要性が指摘されています。

例えば、「やり抜く力」と言われる「GRIT」の重要性は、心理学者のアンジェラ・リー・ダックワース教授により明らかにされています。

アンジェラ教授は、様々な分野で顕著な功績を残した人を複数人分析し、「GRITの有無が社会的成功を収められるを否かを左右する」という結論を導き出しました。

具体的には、「情熱」と「粘り強さ」が「社会的な成功」を左右することを明らかにしています。
*詳しいアンジェラ教授の研究については『GRIT』をご参照ください
*本記事で取り上げている書籍については記事の最後で紹介しているので、よろしければそちらもご覧ください

 

大人でも非認知能力は伸ばせる(ただし子供よりは伸びにくい)

そして本題、大人でも非認知能力を伸ばせるか?

結論は冒頭でも申し上げた通り、可能です。

『性格スキル――人生を決める5つの能力』(鶴光太郎)では「認知スキル」に比べて非認知能力に該当する「性格スキル」は大人になっても伸ばすことができる能力だ、とされています。

性格スキルを構成する5つの要素
  • 開放性
  • 真面目さ
  • 外向性
  • 協調性
  • 精神的安定性

上記の「性格スキル」の中でも、「外向性」「精神安定性」はむしろ幼少期よりも20代以降の方が伸びやすいそうです。

ただし、『家庭、学校、職場で生かせる!自分と相手の非認知能力を伸ばすコツ』によると、「深い非認知能力」と呼ばれる基礎的な性格や気質は幼少期の方が成長(変化)しやすいとされています。

 

大人の非認知能力を伸ばす具体的な方法を3ステップで紹介

ここまで、大人も非認知能力を伸ばすべき、そして大人になっても非認知能力を伸ばせることを確認してきましたね。

ここからは、具体的な「大人の非認知能力の伸ばし方」を3ステップで説明していきます。

*子供の非認知能力を伸ばす方法はこちらの記事をご覧ください

非認知能力を育てる5つの方法を網羅的に解説【もう悩まない】

 

STEP1 どんな非認知能力を伸ばしたいか意識する

冒頭で非認知能力を「数値化、指標化できないが、人生を豊かにするために必要な能力群」と説明しました。

そう、非認知能力は複数の能力の総称なのです。
運動能力が、筋力・瞬発力・体力などの総称であることと同じです。

「運動能力を伸ばす」というざっくりとした目標では具体的なアクションプランを練りにくいですよね?(筋力を伸ばす?体力をつける?)

同様に「非認知能力を伸ばす」では目標が抽象的すぎるのです。

そのため、まずは「伸ばしたい非認知能力」を言語化しましょう。

参考までに、『家庭、学校、職場で生かせる!自分と相手の非認知能力を伸ばすコツ』(中山芳一)で提案されている非認知能力の3分類を紹介しておきます。

この3分類のどれが自分にとって必要かを言語化してみてください。

 

STEP2 PBL(プロジェクトベースドラーニング)を行う

STEP1で目標(伸ばす非認知能力)が決まりましたね。

STEP2は、具体的なアクションに移すフェーズ。

そのアクションとは、「PBL(プロジェクトベースドラーニング)」です。

課題解決型学習」とも呼ばれるPBLは、教育現場で徐々に実践され始めている方法です。

PBLは文部科学省が推進しているアクティブラーニングを構成する一つの方法でもあり、注目を集めています。

*アクティブラーニングについてはこちらの記事で詳しく解説しています。
家庭でのアクティブラーニングが子供の非認知能力を伸ばす!【具体的な方法を3つ紹介】

まず、PBLの定義を説明します。

PBLは、1990年代初頭にアメリカの教育学者ジョン・デューイが唱えた学習方法で、学校の通常の授業とは異なり「答えのない問題」を扱います。

学ぶ人は、社会課題や自身の課題を一つ設定することから始まります。

そして、その課題の解決に向けて進め方を含めて自分で考え、一人もしくはグループでそのプロジェクトを推進していくのです。

 

なぜ非認知能力を伸ばすにはPBLが有効なのでしょうか?

自身の関心があることを起点として学びを進めると、下記のように自然と非認知能力が身についていくためです。

  • 辛いことがあっても、好きだから乗り越えレジリエンスが身に付く
  • 好きだから続けていくうちにGRITが身に付く
  • 好きなことに時間を使えるという感覚が自己肯定感を伸ばす

実際、非認知能力の専門家であるボーク重子氏は、著書『「非認知能力」の育て方~心の強い幸せな子になる0~10歳の家庭教育~』の中で、「非認知能力を育む一番の鍵は本人の熱意」と主張しています。

 

 

ただ、いきなり「社会課題を解決しよう!」と意気込んでも中々難しいもの。

そのため、まずは「パーソナルプロジェクト」と呼ばれる「個人が関心・興味関心を抱いている課題を解決するプロジェクト」から初めてみましょう。

最初から社会のことなど大きい話は必要ないのです。
個人的なことからで大丈夫です。

『家庭、学校、職場で生かせる!自分と相手の非認知能力を伸ばすコツ』(中山芳一)の中で紹介されている、「個人的ニーズを掘り起こしパーソナルプロジェクトを始めるための9つの質問」を以下に記載します。

ぜひ、コピーしてスマホのメモ帳などで解答してみてください!

  1. あなたの好きな(ハマっている)ものやコトはなんですか?できる限り挙げてみましょう。
  2. 1の中であなたの「一番」はどれですか?また、どうしてそれを選びましたか?
  3. 2で選んだあなたの「一番」について、あなたが「もっとこうしたら(こうなったら良い)」と思っていることはありますか?
  4. 3で、どうして「もっとこうしたら(こうなったら良い)」と思いましたか?
  5. そのために、あなたは実際にどんなことができると思いますか?
  6. どんなプロジェクト名にしますか?
  7. そのプロジェクトは「どんなこと(結果)」ができれば成功ですか?プロジェクトの達成目標を具体的に書いてみましょう。
  8. プロジェクト成功に向けてどんな「やること」がありますか?思いつく限り書いてみましょう。
  9. 8で書き出した「やること」を4つの段階に分類して、第1段階の「やること」を早速初めてみましょう!

まだイメージしにくい方もいると思うので、大人が実践しているPBLの例を紹介します。

 

事例1 人と関わり、話すことが苦手だった20代男性のケース

上記の男性の場合、伸ばしたい能力は先ほどの非認知能力の分類でいう、「他者と繋がる力(コミュニケーション能力、共感性など)ですね。

その男性は「他者と繋がる力」を伸ばすために、自分が得意だった折り紙に注目しました。

男性はキャリア教育系のセミナーを受講していたそうですが、同じセミナーの受講生に向けて「直接手を出さずに言葉による説明だけで教える折り紙教室」というパーソナルプロジェクトに取り組んだそうです。

(『「非認知能力」の育て方~心の強い幸せな子になる0~10歳の家庭教育~』p125)

 

事例2 「非認知能力の育成」に興味があった筆者の場合

この記事を書いている僕も、パーソナルプロジェクトに取り組んでいます。

具体的には、自身が中高生時代に非認知能力を伸ばすことができず社会人になってから苦労した経験を元に、「中高生に対して非認知能力を伸ばすような教育をしたい」と思うようになりました。

そこで筆者はプロボノを探し、中高生に対してキャリアやお金の教育を行う団体に所属しました。

現在は実際にその団体の中で、上記のように非認知能力を伸ばす教育を実践しています。

*筆者の上記のエピソードは本ブログを立ち上げるきっかけにもなっており、詳しくはこちらの記事で紹介しています
本ブログ(非認知能力Lab)について

 

STEP3 ナラティブアセスメントで改善

さあ、最終ステップです。

仕事では「PDCA(Plan→Do→Check→Action)が大切」とよく言われますが、非認知能力を伸ばす際も同じ。

つまり、やりっぱなしではなく評価して次につなげるための改善が必要なのです。

ここで問題になるのは、非認知能力は数値化・指標化できないということ。

認知能力の場合は、数値ベースでの振り返りをしやすい一方で、非認知能力の場合はなかなかそれが難しいのです。

例えば、英語力(認知能力)を伸ばす時は「今回のTOEICは550点、リスニングが50%しかできなかったからTEDで毎日リスニングしよう」と言った形で数値ベースの振り返りと改善がしやすいですが、自己肯定感を定期的に数値化してアクションを考えるのは中々骨が折れる作業。
*厳密には、主に質問紙を使って非認知能力の各スキルを数値化することは可能です

では、どうすれば良いのでしょうか?

そこで出てくるのが「ナラティブアセスメント(言葉による評価)」です。

「ナラティブアセスメント」は一言で言えば「自分で自分に、”言葉で”フィードバックすること」。

STEP1で指定した「伸ばしたい非認知能力」、そしてSTEP2で指定した「どんなこと(結果)ができれば成功か」、この2つをベースにして自分自身にフィードバックしていくのです。
(専門的にはこう言った振り返りを「内省」と呼びます)

特に振り返っていただきたいのが、以下の6つの点です。

  1. STEP2で指定した「4段階のやること」をいくつ実行できたか?
  2. 実行できなかったとすればそれはなぜか?
  3. 実行できたとしたら、その「やること」によって「伸ばしたい非認知能力」「どんなこと(結果)ができれば成功か」をクリアしたか
  4. クリアできなかったとしたらそれはなぜか?
  5. (クリアできていない場合は)次はどんなアクションをすれば、もしくは既存のアクションにどんな変更を加えれば目標を達成できると思うか?
  6. (クリアできていれば)次はどんな非認知能力を伸ばすか?

 

まとめ

いかがでしたでしょうか?

大人でも非認知能力は伸ばすべきだし、伸ばせることを理解していただけたでしょうか?

また、PBLにより非認知能力を伸ばす3ステップも少し難しかったと思いますが、是非頭に入れておいていただけますと幸いです。

ありきたりですが、重要なことは「へー、そうんだ」で終わらせずに実行することです。

新しいことを学んだ人のうち実践する人は1割、継続するのはそのまた1割と言われているので、実践と継続だけでも他に差をつけることができます。

継続する自信がない人は、筆者の事例のように団体に所属するなどして実行・継続仲間を作ってしまうこともおすすめです。

 

本記事で取り上げた書籍4冊を紹介

最後に、本記事で取り上げた書籍をこちらにまとめておきます。

本記事を読んで、非認知能力を伸ばすことに興味を持った方は是非読んで見てください!

 

アンジェラ教授が提唱した「GRIT」の重要性を理解できる一冊です。 「粘り強く最後までやり抜く力」を身に付けたい方は是非読んで見てください。

 

非認知能力に該当する「性格スキル」が紹介されている一冊です。 特に「外向性」「精神的安定性」に興味がある方は読んで見てください。

 

複数の研究をベースに、子供だけではなく大人の非認知能力についても触れている一冊です。 本記事の内容をもっと知りたい方にはこちらがおすすめです。

 

主に幼少期についてですが、非認知能力の重要性やその伸ばし方をボーク重子さんという方の個人的な体験を絡めて知ることができます。

 
 
 
 
 

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