「UXってなんとなくわかるけど、実は良くわかっていない。」
「UX」がバズワード化している今、そのような悩みを抱える方は多いのではないでしょうか?
本記事では『UXデザインの教科書』から、ユーザー中心の発想が主流となっている背景や発想のポイントをご紹介します。
① ユーザーが参加して初めて価値が生まれる
② ユーザーが嬉しいと感じる原理をまず初めに設定する
③ 予期的UX~累積的UX
① ユーザーが参加して初めて価値が生まれる
ユーザー中心の発想は、ジョセフ・パインとジェームズ・ギルモアが1999年に発表した、「経験経済」という概念を前提とする話です。上記の2人は、消費の価値として、4つのレベルを定めました。それが以下のものです。
2,製品:工業製品のようなもの
3,サービス:接客サービスのようなもの
4,経験:消費者は単に製品やサービスを消費するのではなく、その消費から得られる体験そのものに価値を見出す
また、上記の4つのレベルは一定の法則に従って流れるとされています。
通常、製造業が提供する製品はコモディティ化に向かって進み、そこから抜け出すためにはカスタマイズが必要です。
その、製品のカスタマイズの手段はサービスと考えられています。しかし、サービスもいずれはコモディティ化する為、更なるカスタマイズが求められていきます。。
サービスの先にある、カスタマイズの方法が、「経験」です。
上記の流れのように、製造やサービスはいずれ「経験」に価値を見出すようになります。
ただの製品ではなく、顧客の感動や個人的な思い出に残るような演出が重要なのです。
ここからこのパートの本題に入ります。これまでの製品やサービスと経験価値の違いは、「誰が価値を生み出すか」というところにあります。
経験経済では、ユーザーが参加することで価値が生み出されます。
- モノの消費:価値は企業が与える
- 経験の消費:価値はユーザーが参加して生み出される
ユーザーが参加して価値が生まれる経験の消費は、社会課題の解決にも寄与します。
その代表事例として取り上げられているのが、「Dog-A-Like」というサービスです。
「Dog-A-Like」は、オーストラリアの動物保護団体とペットフード企業が開発した、飼い主に捨てられた犬と将来の飼い主を繋ぐサービスです。
このアプリでは、「自分と似た顔の犬が見つかる」体験をすることができます。
具体的には、自分の顔写真を登録すると、その顔写真に似ている捨て犬とマッチングすることができるのです。
上記の体験は、「犬は飼い主に似る」ということを逆手にとり、「顔が似ている犬なら相性がいいだろう」という発想で生み出されたもので、驚くべきことにその犬をサービス登録者が気に入れば、その犬の里親になることも可能です。
この取り組みにより、従来よりも約40%も捨て犬の里親になる人が増えたそうです。
この事例の素晴らしい点は、社会的な課題を知らない人に、問題に気付いてもらうのみならず、さらに一歩進んで社会的課題を解決する活動に参加してもらえるようデザインした点です。
「顔が似ている犬であれば相性がいい」という、ユーザーが里親となる犬を選ぶ際の、「利用文脈」に着目し、「仕組み」として解決策を提供しているのは、まさにUXデザインが目指すものであると感じました。
② ユーザーが嬉しいと感じる原理をまず初めに設定する
UXデザインの最大のポイントは、最初にユーザーの嬉しいと感じる原理を設定することです。
これは、従来の機能に合わせてユーザー行動を都合よく設定する手法とは打って変わって、UXデザインは、デザインのアウトプットの最初にユーザー側の要件を決める手法であることを意味します。
重要なことは、「ユーザーの利用文脈」を意識することです。
「利用文脈」とは、ユーザーと製品・サービスの間にあるものでユーザーが製品やサービスを使う状況を意味するものですが、UXデザインにおいてはユーザーは機能を使いたくて製品・サービスを使うわけではない、ことを常に念頭に置く必要があります。
ユーザーは、そもそも生活においてやりたいこと(目的)があり、その目的を果たすために手段として、製品・サービスを使うはずです。
「利用文脈」を知るためにはまず、「人は脈略なく製品・サービスを使うことはない」ことを理解しなければなりません。
ユーザーはどんな状況で、どんな背景があって、どんな脈略でその製品やサービスを使うかわからなければ、そもそもユーザーを理解したことになりません。
UXデザインでは「利用文脈」を踏まえてデザインを実行していきますが、実行段階においても注意すべきことがあります。
それは、「ユーザーの意見を直接聞き入れて製品やサービスのアイデアを実現するのではなく、ユーザーの、言葉にしていない、行動の中に隠された体験価値や本質的ニーズを探索する」ことです。
ユーザーは、そのユーザー固有の利用文脈の中で、それぞれの問題に直面しています。それゆえに、ユーザーが言葉にして伝えてくれる改善の為の意見は、ユーザーが製品やサービスに対して理解している範囲に限られるのです。
例えば、製品の機能の一部だけしか使っていないユーザーには、使っていない機能で改善できる可能性に気づくことはありません。
そのために、大切なのは、ユーザーの本質的な課題を解決するような新しい体験を提案することです。
ユーザーの意見を聞くときは、「なぜそのような問題や課題を感じているか」をより深く観察し、思い付きのアイデアの背景にある「本質的な課題」に気づくように心がけましょう。
「ユーザーの本質的な課題」に気づくためには、「なぜそうなるのか」という問いを大切に使う必要があります。
「なぜ」ユーザーは簡単にものが切れることを望むのか?「なぜ」安心できることを望むのか?等、事実の裏にある、「なぜ」を深ぼっていくようにしましょう。
上記のようにアプローチを考えていった際に、アイデアがごちゃごちゃになる瞬間があると思います。
その際に便利なフレームワークが、「UXコンセプトツリー」です。説明するよりも見る方が早いので、以下の図をご覧ください。
要は、ユーザーの満足ポイントから考え、コンセプトへと昇華させていくのです。話の整理に詰まったら是非使ってみて下さい。
また、デジタル化が進みユーザーのUXも変わりつつあります。
こちらの記事ではデジタル化により人の生活がどう変わるかマーケティングがどう変わってくべきかについて書いていますので、よかったら読んでみてください。
③ 予期的UX~累積的UX
最後に、UXをユーザーの体験期間で区切った「UXの期間モデル」を紹介して本記事を終わりたいと思います。
具体的には、UXは期間によって4つのタイプに分けられています。
【利用中】瞬間的(一時的)UX:実際に経験する
【利用後】エピソード的UX:ある経験を内製する
【利用期間全体】累積的UX:多種多様な利用期間を回想する
一つずつ具体的に説明していきます。
製品やサービスを実際に使用する前の体験を指します。
例えば、家電製品を買う前に、広告やWebサイト、カタログ等を見たり、口コミやレビューを見たり、店頭で店員に聞いたりといった行動が予期的UXに該当します。
また利用体験の予想は、ユーザーが過去に経験した類似の製品や技術、過去の広告等への印象などからも影響をうけます。
「予期的UX」の段階では、製品への期待という形で製品への評価が形成されます。
瞬間的(一時的)UX
製品を使っている瞬間のUXを「瞬間的(一時的)UX」といいます。
スマートホンを初めて使った時の操作性や反応等を指します。
この、「瞬間的UX」の段階では、主に直観的で感情的な反応に基づいて製品の評価が形成されます。
ある目的で製品やサービスを使った後に、その体験を振り返るときの体験が「エピソード的UX」です。
要は、製品を自分なりに使ってみた結果どうだったか、ということです。
やりたいことを達成するために対象の製品を使ってみた結果、うまくいかなかったという失敗体験や、普段とは異なる状況で使ったみたけど意外といい結果が得られた体験等、成功や失敗にとどまらず、1つの体験エピソードとして語ることができる期間が対象となります。
また、「エピソード的UX」は「予期的UX」で形成された期待の影響を強くうけます。特に、期待とは違った結果をもたらす体験は、特に製品の評価に強く影響します。
「エピソード的UX」は、主にユーザーの行動とその結果に対する心理的な判断に基づいて評価が形成されます。
利用期間の長さにかかわらず、利用期間全体を振り返るときの体験を指します。
製品との出会いから現在のかかわりまでのすべてを回顧して、ユーザーが製品との関わりをどのように感じているかを表す概念です。
一見、製品を使っていない期間はユーザーの体験は生じないように見えます。しかし、製品を持っていることが他人への自慢になったり、その製品を眺めているだけで満足感を感じたり、そうした体験も全て「累積的UX」に含まれます。
製品の試用期間全体を対象としているため、製品を利用する体験だけでなく、その製品を提供する企業や組織に対する印象も同時に形成されることもあります。
「累積的UX」は、ユーザー自身と製品のかかわりを全体的に振り返ることにより、主に意味的・理念的な価値判断に基づいて評価が形成されることが特徴です。
本書は体系的にUXデザインを学習できるため、UXデザインの学びはじめとして最適だと思います。
何よりも文章が分かりやすいのと、図解があってビジュアル的理解もできるところがありがたいです。UXデザインを学びたい方、仕事で使うという方は、是非読んでみて下さい。
コメント