年間100以上の資料をつくる僕が『Google流資料作成術』を要約

BOOK

 僕は普段、マーケターとしてデータを扱う部署で働いています。

 その関係で、グラフ化したデータを人にプレゼンするということも毎週のようにあります。

 その中で「どうしても伝えたかったことが伝わりきっていないような気がする」「グラフがきれいに作れない」等の悩みを抱えていました。
しかし、本書に出会って、データのビジュアル化にもルールがあることを知り、仕事のスピード、質共に向上しました。

『 Google流資料作成術 』からの3つの教訓
① 誰に?何を?どのように?
② ノイズを取り除く
③ デザイナーのように考える

① 誰に?何を?どのように?

 早速ですが、分析には二つの種類があります。一つが「探索的分析」、二つ目が「説明的分析」です。

 「探索的分析」は、データを理解し、何を他人に伝えるかを理解するものです。要は、おびただしい量のデータから、示唆を見るけるための広い分析です。

 それに対して、「説明的分析」では、データを相手に伝えるべき情報に変換する必要があります。そのためにまず三つのことを明確にする必要があります。

 一つ目が、「誰に伝えるか」です。要は、プレゼンをする相手です。二つ目は、「相手に知ってもらいたい、またはやってもらいたいことは何か」です。この二つの質問に、”明確に”答えることができて初めて、三つ目の質問に移れる、と本書では述べられています。それが、「主張を伝えるためにどのようにデータを活用するか」です。初めの二つの質問に明確に答えられないような状態では、本来そもそもどんなグラフがいいか、何を書けばいいかが明確になるはずがないのです。

 この考えは、僕の経験に照らし合わせても非常に納得がいくものです。僕が経験した中で、よかったプレゼンは、必ず、プレゼン資料に、「今日伝えたいこと、今日得意先に対して握りたいこと」を書いています。要は、「今日何をしたいか」が明確になっているということです。

 また、資料を見せた際に、先輩から、「このページは何を伝えるために一枚なの?」と聞かれることがよくあります。本書に照らし合わせると、そのような質問を受けて簡単な言葉で明確に答えられないような一枚はおそらく無駄な一枚なのでしょう。

 

② ノイズを取り除く

 資料作りで大切なコトの一つは、「不必要な要素を取り除く」ことです。なぜなら、資料を作るときに何もないコンピューターの画面に要素を一つ加えるごとに、相手に理解するための負荷(認知的負荷)を与えることになるからです。本書では、そのように、過剰または、無関係な認知的負荷を作り出す原因を、「クラター(スペースを取るばかりでなんの理解も促さないビジュアル要素)」と呼んでいます。

 上記のクラターと、伝えたい要素を識別する方法として、「視覚認知のゲシュタルト法則」が紹介されていますので、その6つの法則を記載します。

1,近接…人は物理的に近くにあるものを同じグループに属するものととらえる傾向がある。
2,類似…類似の色、形状、サイズ、向きをもつ者同士を、同じグループとしてとらえる。
3,囲み…人は物理的に一緒に囲まれているものを同じグループとみなす。
4,閉合…人は自分の頭の中にある構造に当てはめて考えることを好む。
5,連続性…あるものを見たときに、人の目は最も自然な形を追求し、それが明らかに存在しない場合でも、勝手に連続性を作り出す。
6接続…線などで物理的につなげられているオブジェクト同士を同じグループの一部とみなす。

 

 さらに本書内では、上記の法則を資料に反映する為に以下のテクニックが紹介されています。

・文字や図形を整列させる
・ホワイトスペースを活用する(ビジュアルコミュニケーションにおけるホワイトスペースは、人前でのスピーチにおける「間」と同じくらい重要)
・コントラストで読み手の視線をコントロールする

 

 さらにさらに本書では、実際にグラフをきれいにしていくためのステップまで紹介されています。

1,グラフの囲みを取る…ゲシュタルト閉合の法則を活用。ホワイトスペースを作る。
2,グリッドの線を削除する…コントラストを目立たせる。余計な要素を削除する。
3,データマーカーを削除する…データマーカーは真っ白な企画書に余計な要素を加えるもの
4,軸ラベルを整理する…縦軸に表示されるたくさんのゼロは相手をイライラさせる
5,データに直接ラベルを付ける…ゲシュタルト近接の法則
6,類似色の活用…ゲシュタルト類似の法則

 要素を「整列」させ、「ホワイトスペースを残す」ことで、より見やすく理解しやすいグラフになるということです。

 

③ デザイナーのように考える

 「形式は機能に従う」、これはプロダクトデザインの格言です。しかし、筆者は、この格言はデータビジュアライゼーションにも当てはまる、としています。データビジュアライゼーションにおける形式と機能とは、データを使って相手に何をしてほしいか(機能)を伝え、そしてそれをできるように視覚(形式)化することだそうです。

 上記を実現する為に紹介されているのが、「アフォーダンス」「アクセシビリティ」「審美性」の三つです。

 「アフォーダンス(行為の可能性、意味)」とは、「その製品をどのように使うか明確に示す、デザインに内包される機能」のことです。十分な「アフォーダンス」が存在する場合、優れたデザインはそのモノに溶け込み、気づかれません。

 このアフォーダンスをデータビジュアライゼーションに活用する方法は、「重要なものを強調する」「気を散らすものをなくす」「情報に明確な視覚的階層を作る」ということです。

 まず、「重要なものを強調する」に際して、大切なのは、「全体の内一部だけ強調する」ことです。なぜなら、強調する者の割合が増えると、強調による効果が薄まるからです。具体的には、強調する部分は全体の10%以下で推奨されています。また、強調の仕方は、追加する要素が少ない、太字・サイズ・色がおすすめされています。

 「気を散らすものをなくす」上では、大切な格言があります。それが、「足すべきものがなくなったときではなく、減らすものが何もなくなった時、それが完璧になったとわかる」(サン=テグジュペリ、1943)です。要は、データビジュアライゼーションにおいては、何を強調するかよりも、何を減らし、何を強調しないか、を決める方が時に重要ということです。「気を散らすもの」は、「図の中でスペースをとっているわりに新たな情報を含んでいないもの(クラター)」です。「気を散らすもの」を識別する具体的な方法は、例えば、「これを削除することで何が変わるだろうか?」と自問し、何も変わらなければ削除、という方法です。また、必要だけれどもメッセージに関係ないモノは目立たせないようにすることも重要です(薄いグレーを使いましょう)。

 「情報に明確な視覚的階層を作る」とは、要は、「相手がどこを見るかを考えた上で各要素をいじって配置していく」ということです。例えば、「Zの法則」が使えます。基本的に人の動きは、Zの文字を描くよう、「左上→右上→左下→右下」という順に動きます。そのため、最も重要な情報は基本的には左上に置きます。どうしてもグラフ内等、左上に置けない場合は、太字・サイズ・色を使って目立たせ、相手の視線を誘導します。

 二つ目は、「アクセシビリティ」についてです。アクセシビリティのコンセプトは、デザインは多様な人々に使用できるものでなければならない、というものです。そのため、要素はシンプルにすべきです。なぜなら、読みにくいものほど相手は行動に移しにくいからです。

 「アクセシビリティ」を高める方法の一つが、「アクションタイトルを工夫する」ことです。アクションタイトルとは、パワーポイント左上の、人が最初に見るスペースです(Zの法則)。ここに意味のないタイトルを書いてはいけません。代わりにアクションタイトルを使います。具体的には、提案内容、知らせたい内容の要約をここに書くのです。そうすることで、何を伝えたいスライドかがはっきりし、相手もその後のグラフや内容を読み解きやすくなります。

 最後の「審美性」は、「そのデザインは美しいか?」とうことです。人間は、実際はさておき、デザインが美しいモノの方がより使いやすく魅力を感じます(最もわかりやすいのが美女かそうでないかということでしょう)。さらに美しいものはより使いやすいだけでなく、より受け入れられやすいです。データビジュアライゼーションにおいては、「色使い」「配置」「空白」の三つの手法で審美性を高めることができます。

 

 いかがでしょうか?本書では、データビジュアライゼーションの考え方や重要性から始まり、最後は具体的に、「どうすれば美しくわかりやすくデータビジュアライゼーションができるようになるか」が書かれています。お仕事で少しでもデータを扱う方は、一読してみて下さい。

 また、この記事を少しでも「いいな」と思ってくださった方はぜひこちらの記事も読んでみてください。こちらの記事では、「人を動かす文章のルール」について説明しています。
 「自分の書いた資料に得意先や上司が納得してくれない」という悩みを抱えている方は必読です。

 

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